短編 | ナノ

それは寝ていたときだった。

隣からプルルルルルル、という音が聞こえてきて、それが自分から誰かに電話を掛けていることに気付いたとき、すでに手遅れだった。その上慌てて電源ボタンを連打してしまったので、もしかしたらワン切りになってしまったかもしれない。真実はわからないけど。

そのせいですっかり目が覚めてしまった。
液晶画面に映っていた名前が残像で頭に蘇ってきて、背筋が凍った。しかしきっと私の思い違いだという僅かな希望に縋って発信履歴を確認してみる。

しっかり残ってた。

「どうしよう・・・ああ!どうしよう!!」

相手に着信が届いていなければいいのだが、おそらく届いているだろう。出なかったのは、気付いていないか、出るところだったか、掛けた時間があまりにも短すぎたかのどれかだと思うけど・・・。本当は届いてなかったで終わってほしい。

というのも、相手はよりにもよってクラスの男子。(普通朝から男子に電話なんかしないよね彼氏じゃない限り・・・)しかもめったに話さないというか、いや、話したことはあるけど、友達というよりただのクラスメイトって感じで、電話なんて初めてだ。当たり前か。

本当にどうしようか。

「わっ!」

いきなり携帯が震えだした。

まさかの事態だ。液晶画面にはさっき映ったものと同じ名前が映し出されている。
無視することはできないので、すぐ謝ればきっと向こうも分かってくれるだろうと前向きに考えた私は通話ボタンを押した。

「もしもし、」

「先刻電話があったが何か用があったのか?」

思い切って全て話してしまおうかと思ったが、振り返ってみると馬鹿らしくて恥ずかしくなったのでやめた。顔に熱が集まりだす。

「ごめん、間違ってかけちゃって・・・本当にごめん!」

よし言った。これで大丈夫だ、問題無い。

「そうか」

「うん。本当ごめんね」

「・・・気にするな」

「ありがとう。・・・じゃあ、」

「待て」

「え?」

「今日、何か予定があるか?」

「予定は無いけど。すごく暇人だったり、あはは」

「・・・・・・」

「あ、のー・・・」

「前に、勉強を教えてほしいと言っていたことがあったな」

「ああ、うん。言ったかも」

「今日良ければ、来るか?」

「え!?い、いいの!?」

「ああ」

「じゃあ・・・せっかくだから」

「時間の連絡は後でこちらから掛けなおす」

「わかった。じゃあまた後で」

「ああ」

・・・・・・。
耳元でツー、ツー、と電話が切れた音を聞いてその場から動けなかった。頭の中はごちゃごちゃで、まだ彼の声が残ってリピートしてる。

まさか間違い電話から会って勉強する約束をしてしまうなんて、数十分前の私には到底予想できなかっただろう。今でさえ信じられないのだから。
でも、少し喜んでいるのは事実だ。本当は初めて話したときかっこいいと思ってて、まだ気になるだけの存在だったけど、今日でそれは変わるかもしれない。

いい一日になりそうだった。






(この後彼の家で、)
(告白されるとは知らず)

-----キリトリ-----
実話です(笑)
タイトル通り、肘で奇跡起こしました。絶対に電話掛けられないような相手に掛けられた。まあ女の子でそこそこ仲良い子でしたが。うん、まだよかった。
ほんとにアヤナミ様に繋がればいいーのにーなーあー(:3っ)っ
つか寝ている間に携帯開いたままだったからって電話帳開いてフォルダ開いて少しスクロールして相手選んで電話出来るもんなの?

 

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