短編 | ナノ
       




今日は俺の誕生日ってやつで、毎年恒例で行われる誕生日会とやらを万事屋で行った。まあそれはいつもと同じで。上手いもん食って、わいわい騒いで、酒も飲めて、好き放題出来て、大好きな甘味であるケーキを食えて、毎年それは変わらない。だからといって嫌とかいうわけじゃなくて、それはそれで毎年楽しみにしちゃったりするんだが。

でも今年は違う。今年はメンバーが一人増えた。去年も一昨年も俺の誕生日を祝ってくれてたが、今年はちゃんと万事屋に、誕生日会に招待したんだ。なぜなら彼女は俺と去年付き合ったばかりで、付き合ってるからってことを理由に、遠慮がちな彼女を招待出来た。これ以上に幸せなことはない。


「今日は素敵な一日でした」

「あっ、坂田さんの誕生日なので、私が言うのはおかしいですけど、えっと、その」


あたふたして頭を抱えて一生懸命考えている彼女が可笑しくて、つい吹き出してしまった。そうすると彼女は笑わないでください!と少し強気に言う。顔を真っ赤にして照れながら。

俺って幸せもんだわ、本当。こんな可愛い彼女出来て、一緒に誕生日祝えて、なんかもう時間がこのまま止まればいいって思えてくる。
まあそんなことはさすがにこの奇妙な世界でも有り得ることなく、俺の誕生日は過ぎちまうんだが。


「あ・・・、あと5分で、11日になっちゃいますね」

「なあ、もう一回二人だけでお祝いしねえ?」

「え?いいですけど・・・でもケーキ・・・」

「ケーキならまだあるぜ」


俺が食べきらずに残しておいたろうそく一本分しか乗らないであろう分のケーキを目の前に置く。


「それだけでですか?」

「笑うなよ、これも立派なケーキだ」

「そうですね。じゃあろうそくを・・・使ったやつですけど、点きますよね?」

「点くんじゃね?」


少し不安定なケーキにろうそくを一本さした。改めて見ると確かに滑稽だ。

じゃあ電気消しますよー、と彼女は立ち上がる。電気が消される前にライターでろうそくに火を点けた。

一点だけ明るくなった部屋。俺の誕生日はあと1分をきった。


「ハッピーバースデー、トゥー、坂田さん」

「・・・なあ、今日だけでいいから、さ。・・・下の名前でさん付け無しで呼んでくれねえ?」

「・・・きょ、今日だけですよ」


暗いせいでよく見えないが、ほんのり頬を染めて照れているのだろう。


「ハッピーバースデー、トゥー、・・・銀時」


俺から言い出したことだが、初めて名前で呼ばれたのは結構きた。
頬に熱が集まるのを感じながら、ろうそくの火に息を吹きかけた。


「え・・・」


日にちが変わる直前、真っ暗になった一瞬だった。俺の頬に柔らかいナニかが当たって。それがキスだと理解したとき、彼女が俺の胸元に頭突きしてきた。いや、軽い頭突きだけど。


「な、何も言わないでください!私からの、その、サプライズプレゼントです!!」


おそらく真っ赤な顔をしているのだろう彼女の頭を優しく撫でた。


「ありがとな。俺、今すっげー幸せだわ」


誕生日、名前を呼ばれて、キスを貰って、しかも彼女のほうから。
あーたぶん今鼻の下伸びてる。それに俺も顔赤いかも。
いい年こいて赤いとはなんだという話だが、彼女相手だと何故か俺も若返ったように初心な反応になっちまう。きっとこれが本気の恋だっていう証なんだろうな。


「なあ、南子」





来年も祝ってくれるか?

(もうお前がいない誕生日は、)(無理みたいだ)



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補足:新八とか神楽ちゃんとかお登勢さんとかキャサリンとかたまもお祝いしたけど、みんなはスナックの方にいて、二人に気をつかったみたいな感じ。

銀さんおめでとう!!

2011/10/10


 

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