短編 | ナノ
※学生パロ 高校生


「それでね、それでね!」

昼休みの穏やかなひととき。いちご牛乳をストローで飲み込む。甘い味が口の中に広がって、気分が落ち着いた。だがそれとは裏腹に心の中は、味で例えるなら苦かった。

「ねえねえ、聞いてる?」
「はいはい聞いてますよー」
「聞いてないじゃん!!」

聞いてるっつの。聞きたくもねえ野郎のことを。なんであいつなわけ?あいつだったら俺の方がよっぽどマシじゃね?100倍、いや1000倍、いやいやもっとマシだろ。

「もういいよ。銀時には土方くんの良さなんかわかんないもんね」
「なんで俺があのマヨ野郎の良さをわかんなきゃいけないんだ」
「あ、それもそうか」

納得するな。
南子は俺にとって親友。小学生からの付き合いだから、結構長い付き合いになる。そして高校になって知り合った土方に一目惚れ。それからずっと惚気話のオンパレード。だが付き合ってはいない。それが唯一の救いだったりする。なぜならそんな南子が俺は好きだからだ。でも南子の方は俺のことをなんとも思っていない。友達以上恋人未満、ってやつだ。だから俺もずっと告白出来ずにいて、そうやっているうちに南子は他のやつを好きになってしまった。それがよりにもよって土方なのがイラつく。

「本当にかっこいいなあ」
「いったいどこがかっこいいのか皆目見当つかねえよ」
「それは銀時が男の子だからだよ」
「女の子になったって、あんなやつ嫌だね」
「そういえば銀時って土方くんと仲悪いよね。なんでそんなに毛嫌いするの?」
「知らねえよ、嫌いなもんは嫌いなんだよ」
「えー何それー」

お前があいつのこと好きだからに決まってんだろ。誰が自分の好きな女が好きな男を好きになれるよ。もしいるとしたらそいつは仏とかなんかだろ。俺は無理だ。嫉妬の塊で仏になんかなれるわけねえ。

「…お前はなんであんなやつのこと好きなの」
「そりゃあもう顔でしょ」
「……」
「ちょっと、何その顔」
「まさか南子が顔だけで決めるやつだとは思わなくって」
「別に顔だけで決めてないよ。性格も大好き!優しいところとか、気が利くところとか、フォローしてくれるところとか、でも喧嘩は強くて、正義感強いところとか!」

ああもう聞きたくねえ。他の男なんかの褒め言葉なんか聞きたくねえ。そんな頬染めて照れたように言う顔なんか見たくねえ。嫉妬と怒りがぐるぐると渦巻いて、理性がなんとか持ちこたえる。このまま南子を襲ってしまえば楽になれるだろうか、その唇を奪ってしまえば南子は俺のものになるだろうか。そんなことしたら、もう友達でさえもいられなくなるんだろうな。それが怖いんだ。それだけは阻止したくて、今でもこうやって嫌いなやつの話も聞いていられる。

「でもあいつモテるんじゃなかったか?」
「うっ、そう、なんだよねー…」
「でも好きなんだろ」
「うん」
「なら弱気になったって仕方ねえだろ」
「でもでも、私より可愛い子とか美人な人はたくさんいるんだよ!」
「だからなんだよ。あいつが顔だけで選ぶとでも思ってんのか?」
「思わない」
「だったら、モテようが、お前なりの個性でアピールすりゃいいじゃねえか」
「銀、時」
「じゃあこの話はもうお終い。もうチャイム鳴るし、帰」
「うわあああああさすが私の親友!大好き!銀時がいてよかった!」
「はいはい、わかったから鼻水つけてくんな」

抱きついてきた南子を剥がす。名残惜しく思いながら。これ以上くっつかれたら俺が壊れる。こんだけ気持ち殺しながら励まして応援してやってんだ。感謝すべきだよもっと俺に。







「ぎ、銀時!私、告白する!」

思わず絶句した。目を大きく開いて、持っていたいちご牛乳を落としそうになった。

今日、南子が土方に告白する。

早まる心臓。上がる心拍数。覚悟はしていた。こいつが土方を好きだと言ったときから。だけどやっぱり苦しい。応援なんて出来るかこのやろう。涙が出てきそうになるのを必死に絶えた。顔が歪むのが自分でもわかる。南子は気付いていないだろうか。どうか気付かないでくれ。南子には幸せになって欲しいんだ。

「そうか、後悔しないようにちゃんと気持ち届けて来い」
「うん!今までありがとう銀時!いってきます!」

そんな言い方するなよ。もう一緒にいれないみたいな言い方。さようならと言われているような気がしてならねえんだよ。土方が南子を好きなのは知ってる。晴れて二人は両思いで結ばれる。だけど、俺たちは友達ですらいられなくなるってのか?後悔しないように気持ち伝えて来い?ははっ、俺が言うべき言葉じゃねえよ。後悔するに決まってるのに、気持ちを伝えようとしない。伝えられねえ。くそっ、なんで、なんで、俺じゃねえんだよ。

「好きだ、南子」

俺の告白は誰にも聞かれることなく空だけが見ていた。





報われない親友
(俺の気持ちが聞こえればいいのに)



 

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