短編 | ナノ




「・・・総理大臣は、・・・を集めて・・・」
テレビから聞こえてくる政治のニュース。映し出される話し合う政治家たち。必死になって取材するマスコミ。
何も進展なんてしないよ、そう心の中で毒づいた。知ってる現実だけ見て、あとは知らんぷりする。だいたいみんなそんなもんでしょ?
ごはんを食べ終わって、食器を片付けて、テレビの時間を確認して、他人事のようにその箱の中の映像を見て、電源を落とした。
早くしなきゃ学校に遅刻しちゃう。



   




家を出たら、学校までちょっと遠回りになる道をわざわざ通って、曲がり角をどきどきしながら曲がった。
「偶然だね」
なんて嘘ついて、早まる心臓を落ち着かせて、にこにことあなたの左隣をキープする。
あなたはわかりづらいけど、でも確かに少し笑顔を見せてくれて、それが私の宝物。学校まで、5分しかないけど、それでも私の大切な宝物。



   




“世界が”どうなっちゃうとか、全然実感わかないし、わからない。
ただあなたとの距離が今幸せで、肌と両手に伝わる幸福感が大好きで。
『終末がやってくる!』
度々流行る、そんな噂は別に興味ないんだ。だっていつも誰かが予知しても、全部大ハズレ。世紀末の大予言もオオハズレ。人類皆ビックリだよ。シュウマツロンだって、きっと宇宙人?かなにかのイタズラでしょ?ありえないよ、そんなこと起きるわけないよって、根拠もない自信で言い張るんだ。その自信はどこからくるんだって、自分で自分を嘲ながらね。
部屋の壁のカレンダーを見て、私は溜め息ついて書き出すの。何回も何回も書いては、ぐちゃぐちゃに丸めて捨てて、また書いて、そんなループは日常と化していた。週末がやってくる!今度こそ、この想い、伝えなくちゃ。



   




懲りなく流れる政治のニュース。国の偉い人たちはみんな机とにらめっこして、意味わからないこと話し合ってる。でもどうせ何もかわらないんでしょ。だからごはんを食べて、食器を片付けて、テレビの時間を確認して、他人事のようにその箱の中の映像を見て、電源を落として、学校までちょっと遠回りになる道をわざわざ通って、曲がり角をどきどきしながら曲がって、「偶然だね」なんて嘘ついて、あなたの左隣をキープするんだ。それはいつもと変わらない朝のはずだった。「偶然だね」ってあなたと一緒に登校して、その小さな小さな笑顔を独り占めするはずだったのに。あなたは突然、『遠く』に行ってしまった。大人たちの一言で、何もかも変わって、私の日常はなくなった。幸福論なんて、ただのチリ紙同然で、私の幸せは溜め息とともに逃げてしまったのかな。



   




“世界が”なんて知らないよ。戦争?天災?知らないよ!ただあなたとの距離が今、離れていって、肌と両手に伝わる喪失感が苦しいよ。
『終末がやってくる!』
そんなことホントに、興味なかった。今まで全部大ハズレだったくせに、根拠もない自信は怖気づいてどこかに消えうせた。部屋の壁のカレンダーを見て、私は溜め息ついて書くのを止めた。どうしよう、気持ちを伝えられなかった。
抑えきれないこの想い。願いと夢をつめこんだ手紙。一つじゃ全然足りないの。どれだけ書いたって、伝わらないんだ、もう。
両手じゅうの、想いのピース。抱えきれないくらいのラブレター。送る相手?知らないよ。もうわかんないよ!・・・それならば、いっそのこと、世界中にばらまいてしまおうか?



   




「しゅうまつがやってきますよ!愛の手紙、ひとついかがですか?」どこかの誰かがちょっとでも、わかりづらくても、笑顔になれるようなそんな世界なら、この手紙はいつか届くだろうか?
終末がやってくる!あなたはもうやってこないのにな。週末がやってくる!あなたはもうやってこないのにな。でも、終末がやってきても、もう二度とこないで、大嫌いだから。
週末がやってきても、もう二度とこないもの、誰かの小さな笑顔。
伝えなかった馬鹿な私。愛してる。ただそれだけなのに。愛してる、いまさらつぶやいてみたって、伝わらない。戻ってこない。もう何もかも遅かった。だから伝えなきゃ。私みたいにならないでって。



   






「あなたとあなたの愛する人を大切にね」














----------キリトリ----------
参考曲:しゅうまつがやってくる!/鏡音リン/ささくれP

パロディに挑戦してみた。が、撃沈。誰かがリメイクすればいいと思うよ。誰かが続きつくればいいと思うよ。


 

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