短編 | ナノ

どうせここで待っていてもこないだろうと探しに行くことにした。


「っ!!」


ガラッと開けてもいない扉が開いて、目を開いて固まる。


「・・・すまない」


探す手間が省けた。


「あ、えっと・・・ヒュウガたちが!ハルセくんがケーキ作ってきたから屋上で食べようって・・・」

「そうか」

「うん、一緒に行こっか」

「ああ」


何だろう、いつも話しているのに言葉が出てこない。握った手が汗で湿ってる。


「・・・どうした?」

「え?」

「行かないのか?」

「あ、行く行く!」


何してるんだ私。早く渡さなきゃ。


・・・結局屋上の扉の前まで来てしまった。

階段を上がっていく。私の前を進む彼。チャンスは今しかない。


「アヤナミ!」


止まってゆっくり振り返るアヤナミ。
かわいくラッピングした丸い箱を押し付けるようにして渡した。


「ハッピーバレンタイン!」


そのまま屋上の扉を開く。するとみんなが座ってケーキを食べていた。
待てなかったのか君たちは。


「南子のはこれだよ!」

「ありがとうクロユリくん。ハルセくん、いただきます」

「はい」

「渡せたんだね」


アヤナミを確認してヒュウガが耳打ちしてきた。

私はどや顔をくれてやった。


しかしハルセくんのケーキを食べて、顔が青ざめる。


「アヤナミさまのはこれ!」

「・・・ありがとうクロユリ、ハルセ」

「アヤナミ先輩、その箱どうしたんですか?」

「コナツったら、ほんと鈍感なんだからー」

「な、何でですか」


私がケーキを食べた後アヤナミを見たときには、アヤナミもすでにケーキを食べていた。
取り返さなくては。

無言で立ち上がり、アヤナミのもとへ行き、さっき渡した箱を取る。


「・・・なんのつもりだ?」

「ごめん、間違えた」


持って帰ろうとして、箱がアヤナミによって奪われる。


「!?」


そしてあろうことか、開けて中を確認すると、持っていたフォークで一口サイズにして食べてしまった。


「・・・ックク」

「ちょっ、笑わないでよ!」


私とアヤナミ以外は何が起きたと頭にはてなマークを浮かべてこちらを見たまま。


「確かにハルセのものよりははるかに劣るな」

「うるさいっ、わかってたなら食べないでよ!」


理由がわかって周りが吹き出し、ざわめきだした。


「南子」


彼が手招きするのでしゃがんで顔を近づける。

ちゅっとリップ音が聞こえて、一時停止した。


「ごちそうさま」


たまにはこんなイベントも悪くない、なんて、思ってしまった。


おいしいかじゃなくて、誰からのかってこと。
(ホワイトデーで彼にお返しされるのはまた別の話。)


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学生(゚∀゚)ウマウマ


 

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