「ナコ」 名前を呼ばれて、彼の傍まで歩み寄った。 ソファに深く座っていた彼は、私に隣に座るよう促した。 ここは彼、アヤナミ様の部屋。私は仕事が終わった後、渡したいものがあると言われて部屋まで同行した。アヤナミ様は上着をハンガーにかけると私の上着もかけてくれて、中央に置かれているソファに深く腰掛けた。そして、私の名前を呼んだ。 隣に座ると、アヤナミ様はテーブルの上に置いてあった箱を掴み、私の前に差し出した。私は静かにそれを受け取り、アヤナミ様の顔を見る。 「お返しだ」 たった一言、それだけ聞いただけで理解した。これはアヤナミ様からの、ホワイトデーのプレゼント。私が一ヶ月前、バレンタインデーでチョコを差し上げたのを、アヤナミ様は憶えていらしたんだ。 嬉しくて、笑みが零れる。 「開けてもいいですか?」 「ああ」 丁寧にリボンをはずし、包装を剥がしていく。箱の蓋を開けると、そこにはブレスレットが入っていた。シンプルではあるけど、高級感がある。アヤナミ様のことだから、きっと高値のものを買ったに違いない。そんなものを貰うと逆にこっちが困ったりする。バレンタインデーをやり直したくなるよ。 「手を出せ」 「え、」 私から、アヤナミ様がくださったブレスレットを取ると、私の手を掴んで、左手につけた。 手を上にあげ、光に当てるとキラキラ光るブレスレット。アヤナミ様がくださった、私の一生の宝物。 「アヤナミ様、ありがとうございます!」 「ああ」 にこにこしていると、アヤナミ様はポケットから何かを取り出した。 「私にも、つけてくれないか?」 アヤナミ様の手に持っていたのは、私が今つけていただいたものと、全く同じのブレスレット。 「は、はい!えっと・・・どちらの腕につけましょうか?」 「右で頼む」 私はアヤナミ様の右手にブレスレットつける。でもドキドキして金具が上手く掴めなくて、掴めた後も、なかなか輪に入れられない。 「出来た!・・・!!ア、アヤナミ様!?」 やっと輪に通せたと思ったら、急にアヤナミ様に抱きしめられた。その反動でソファに押し倒されているような体制になる。一瞬戸惑ったけど、普段あまり感情を表したり、こうして積極的に甘えるようなことはしないから、なんとなくきゅんと胸がときめいて、ゆっくり腕をアヤナミ様の背中に回し、抱きしめた。すると、アヤナミ様の抱きしめる腕が強くなった。 「アヤナミ様、私、幸せです」 「・・・そうか、」 幸福のペアルック (「以後もそうやって甘えてくださったら嬉しいんですが」) (「・・・考えておこう」) ...................................................................................................... 甘くしてみました。は、恥ずかしい、甘夢!! [しおりを挟む] | |