バレンタインデー企画 | ナノ
朝から学校に行くと、晋助に会った。これはいつも通りである。授業中、晋助からの視線を感じる。これもいつも通り。授業が終わった短い休み時間、晋助が私の席に来る。これもいつも通り。でも少し違った。お昼、ご飯を食べようとすると晋助が一緒に食べに誘いに来る。これもいつも通り。デザートはとかおやつとか騒いでたけど。放課後、晋助が送ってくれる。これもいつも通り。自宅、晋助が私の部屋にあがる。これもいつも通り。

「なわけないだろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「まあそう怒んなって」

そういって真顔で落ち着かせようとしてくる晋助に更に怒りが増す。
どうして私の部屋にまであがりこんでいるんだ。おかしい。いや、晋助のおかしさは今に始まった事ではないけど。

「で、今日は何かあるんでしょう?いつも以上に一緒にいる時間が多い」
「そんなに一緒にいたかったんなら言ってくれりゃあ「何故そうなる」…まさか、忘れたんじゃあるめえな、」

いつもとは違って真剣な表情をする晋助にたじろぎながらも、平然を装う。
一体何を忘れてるっていうの。

「今日は男にとっての一大イベント、貰えるか貰えないか、いくつ貰えるかを競い合う男の中の男を決めるそりゃあ大事な、」
「もったいぶらないで早く言ってよ」
「バレンタインデーだ」

がくっ、と座りながらこけてしまった。体制を整えて晋助を見れば、何故だかわからないけど自信満々の笑みを浮かべていた。…本当にこの男、意味がわからん。

「つまり、自慢に来たって事?」
「ああ、それもあるが」

私の目の前に晋助の手が出された。手の甲ではなく、手の平を。目をぱちぱちして首を傾げると、晋助は早くと言うかのように手の平を上下に振る。
ますますわからない私は、晋助の手の平の上に自分の手を置いた。

「…お前は犬か」
「……」

ちょっと恥ずかしくなって、目を逸らしながらゆっくりと手を下ろした。でもそれは晋助によって途中で止められる。
しっかりと私の手を掴んだ晋助。いつもと違う行動に、いやいつもしてたかもしれないけど驚いて目を見開きながら手から晋助に視線を移す。

「チョコレートだよ、お前からの」
「は?」
「バレンタインデーって言っただろ?クラスの女子、それに他のクラスの女子からだってくれたっつーのに、お前からはねえってことはあるめえ」

ごめん、ないよ。なんて言えば不機嫌になること間違いない。さて、どうしようか。

「うーんとね、違う男子にあげちゃった」

目を大きくそりゃ凄い大きく開いた晋助。凄い怖い。目が怖い。

「おい、あげた男って誰だ。今から殺してくるから教えろ」
「いや、殺しに行く人の事なんか教えられるか!!」
「だったら一緒に行って指さすだけでいい」
「いや、同じだよ」

不機嫌にさせないようにしたのに、間違った選択をしてしまったようだ。おかしいな、乙女ゲームでは必ず高感度アップの選択肢を当てられるのに。ロードできないかな。

「さっきのは冗談だよ、誰にもあげてない」
「ならいい」

どうやらロード成功したらしい。ここからが勝負だ。って、私晋助の高感度あげたいとは思ってないんだけどな。

「じゃあまだあるよな。よこせ」
「……仕方ないな」

とは言ったもの、用意なんかしてない。どうしよう。どうしよう。

「ないのか」
「え!?あ、あああるあるよ!」
「どっかのじゃじゃ馬姫みたいな語尾になってんぞ」

このままじゃ晋助に気付かれる!どうしたら…っていうか、なんで悩んで困ってるんだろう。

「仕方あるめえ。チョコの代わりにキスで許してやらあ」
「…………幻聴が」
「幻聴じゃねえよ」
「空耳かなあ」
「もう一回言うか?」
「結構です」
「チョコの代わりにキ「わかったからあああ!!」唇以外は無効だからな」

くそっ、逃げ場所を封鎖された!
いつもは逃げられるのに、いつもは私の方が有利で、勝つのに。いつも通りなはずなのに。今日はいつも通りじゃないらしい。そして私も。
チョコを貰っている晋助がかっこいいとか思ったり、ジェラシー感じたり、私がもっと可愛くて、素直で、ちゃんと用意してればって。

もうしてしまおうか。晋助にならいいかもしれない。それに、アメリカではキスなんて、挨拶がわりなんだし、よし!
って、晋助がずっとこっち見てる!やっぱり無理だああああ!!

「し、晋助…やっぱり」
「俺が嫌いか?」
「え?」
「今までずっと言ってきただろ、俺はお前が好きだ。お前は?まだ嫌いか?」

何回も聞いた晋助の愛の言葉。あまりにも軽々しく言うからからかってるのか冗談なのかふざけてるんだろうとでも思ってた。でも、その目は本気なの?

「嫌いじゃ、ないよ」
「じゃあ、好きになれよ。俺はお前が好きだ。愛してる」
「っ!?よ、よくそんな恥ずかしい事、」
「何度だって言ってやる。お前のためなら」
「〜〜っ!!もう、仕方ないな!」

私は晋助の腕を思いっきり引っ張って、そして、キスをした。晋助が余裕の笑みを浮かべているのがむかついたのと、恥ずかしさのあまり目を閉じた。

来年は、



 渡そうか
 (キスのように甘いチョコを)

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学生俺様高杉!ヒロイン大好き感が上手く出せなかったかもしれない。
甘すぎる、かな。いつもを連発しているのは仕様。


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