いつもと違う高い位置に結ばれた髪。 右手には血に濡れたサーベル。 私の周りには無数の屍。 漂う血腥い臭気。 前方からは止まることを知らない敵人。 背を預けるはサングラスの軍人。 彼もまた、右手に血に濡れた刀を持っていた。 周りは無数の屍。
今日は、バレンタインデー前日であるのだが、この状況からはとても、楽しみだとか、緊張したりだとか、一切感じられない。当たり前ではあるが。 明日のために今日の夜作るチョコレートが、血の味になってしまわないか心配だ。
「なこたん」 「何、ヒュウガ」
背中に心地好い低音が響く。
「明日、バレンタインデーだね」 「そうだね」
どうやらヒュウガも同じことを考えていたようだ。背中越しに、伝わってしまったのだろうか、
「なこたんは俺にチョコくれるの?」 「昨年も、一昨年、一昨々年も、ブラックホークの皆にはあげてるんだけど?」 「俺に、チョコくれるの?」 「…あげるよ」
見えないけど、ヒュウガの笑みが濃くなった気がした。先程よりも剣の動きが疾い。
「本命?」 「……この任務が終わったら教えてあげる」 「じゃあ急いで終わらせないとね」
ヒュウガが一気に敵を斬りにかかった。私も離れるように敵の中へ突っ込んでいく。 かわして斬って、かわして斬って、その繰り返し。 後ろでも前でも断末魔の悲鳴が聞こえてくる。 時間がゆっくりに感じられて、不思議な空間に自分がいるような気分だった。
途端、私は現実に連れ戻され、目の前に武器を振りかざしている敵の姿。殺される、とかいう恐れはなく、ぼーっとそれを見つめて何が起こるのか眺めていた。 すると、目の前に黒が広がって、振り下ろされるはずだったあろうそれは、一瞬躊躇って、地面にぱたりと墜ちた。
「何してるの、ナコ」 「私が死んだら、ヒュウガは返事を聞けなくなるんだよなあ、って、思って」
本命か、義理か、
ヒュウガの瞳はサングラスに隠れていて、何を考えているのかわからない。
「死なせないよ、絶対に」
にやり、と彼がいつもする独特の笑み。悪巧みを考え付いた時の表情に本来使われるそれ。でも、私はそれが好きだ。
「任務は終了」 「返事は、」
好き (私は、死ねない)
--------------- まとめるのが下手だから、 意味不明になるのだろうか バレンタインに相応しくないですね、 なんか暗い(笑)
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