「お邪魔しまーす」
夜中の1時頃、私はコナツの部屋を訪ねた。コナツは今は入浴中らしく、部屋に勝手に入った。部屋はコナツらしく綺麗に片付けられていて、一部の書類を見なかったことにすれば整理整頓された部屋。きっと今日あたりに提出する書類なんだろうな。 昨日はバレンタインデーでブラックホークに小包小包嫌がらせ小包プレゼント嫌がらせと大変な一日だった。アヤナミ様はいつも以上に苛々しているし、ヒュウガ少佐はいつにも増してテンション高くて絡んできてうざかった。コナツの手伝いもしないし、というかコナツの仕事の大半はヒュウガ少佐がやることなんだけど。クロユリ君は届いた小包を開けて喜んで、嫌がらせの方のチョコを食べようとしたのを止めるのにハルセさんが必死だった。カツラギさんは珍しく面倒くさいから全部捨ててしまいましょうかとか言うし、それに火がついたようにザイフォンを出し始めたアヤナミ様を止める事は容易じゃなかった。ヒュウガ少佐はアヤナミ様からの八つ当たりで瀕死状態になって、上司が本当に使えなくなったコナツはもっと忙しくなっちゃって、ほんとに酷い一日だった。 結局仕事は全部は片付かなくて、明日に持ち越せるものは仕方なく明日やるということになった。だから仕事が終わったのは夜の12時。皆げっそりして帰っていった。
そして私は何故コナツの部屋に来たのかというと、昨日渡せなかったチョコレートを渡すためであった。コナツも疲れてるだろうし、渡したらすぐ帰って寝ようと思っていたのだが、入浴中だもんね。机に置いといて帰ろう。 書類が置かれている机ではない方の机にチョコレートの入った箱を置き、帰ろうと振り返ったら、ちょうどお風呂からあがったらしいコナツと目が合った。パジャマ姿で頭にタオルをかぶって、髪は濡れていて水が滴っている。鼻血を出しそうになったのは秘密だ。
「なんでナコがここに…」 「勝手に入ってごめんね、渡したいものがあって…って聞いてる?」
ぽかーんと目を点にしたまま動かないコナツ。目の前で手を振ってみたが反応が無い。仕方ないので最終奥義を使うことにした。
「うひゃあ!!…ナコ、これは止めてって何回言ったらわかるんだ!!」
耳にふー、と息をかけただけでこの反応。最終奥義、私はいつもコナツが起動停止や話を聞いてくれないときに使っている。とっても役立つ優れものだ。
「渡したいものがあったんだ」 「渡したいもの?」
机の上の箱を指差せば、そこに向かって歩き出して、コナツはその箱を手に取った。
「開けていいよ」
そう言うと、コナツは私の顔を一回伺って、箱を開け始める。
「チョコ、レート?」 「過ぎちゃったけど、バレンタインだったから」 「私に、…?」
チョコから私に視線を戻して聞いてくるコナツに私はうなづく。
「ヒュウガ少佐とか、アヤナミ様とかではなく、私に…?」 「何回も言わせないでよ。私のチョコはコナツにだけだよ」 「……え?」 「だから、」
もう一度言おうとしたら、コナツに方を強く掴まれた。今度は私の方が驚いて目を丸くする。
「だって、私はてっきりナコはヒュウガ少佐のことが好きなんだと…」 「私はコナツが好きなんだよ?」 「っ!…で、でも、アヤナミ様とかにもよく微笑みかけてたし、」 「アヤナミ様の機嫌を取る一番の方法だよ」 「クロユリ中佐とかにいつも抱きついて…」 「母性本能ってやつかな」 「ハルセさんと仲良く話してたり!」 「そりゃ誰だって仲良く話はするよ」 「カツラギ大佐とはよく料理して…」 「コナツに食べてもらいたかったからね」 「っ!!」
コナツは顔を赤らめて何か言おうとしていたけど、結局何も話さなかった。 私はコナツが鈍感すぎて笑ってしまい、コナツは照れて下を向いていた。
「でも、チョコを渡すだけだったのに、成り行きで言っちゃったなあ」 「ナコ、」
コナツが真剣な目になったから、わたしも真剣になってコナツの話を聞く。
「私は、ずっとナコのことを見てた。でも、少佐や、アヤナミ様、中佐、ハルセさん、大佐と一緒にいるナコを見て、不安になったんだ。ナコの好きになる人が私じゃなかったら、どうしようって。それを考えたら、みんな、ナコが好きになってもおかしくなくて、すこしだけ諦めかけてた」 「コナツ……」 「でも、ようやく気付いた。見て待ってるだけじゃ駄目だって」
コナツは私の頬を撫でて微笑んで、私もそれにつられて微笑んだ。
ライバル (は倒さなきゃだって)
--------------- コナツのため口は難しい。
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