放課後、私は一人数学準備室に足取り重く向かった。 扉の前まで来て、一回深呼吸をする。 大丈夫、お前ならやれる、やりきれ
「早く入れ」
…なさそうだ。 失礼します、と一礼して扉を閉める。
「私は入れ、と言ったはずだが」
鞭まで取り出してきたので、作戦は虚しく失敗し、大人しく中に用意されてあった椅子に座った。
机を挟んで座っているのは、数学教師で学校一恐ろしいアヤナミ先生。常に鞭を装備していて、容赦なく鞭を振るい、毒舌を吐く。超サディスティックなことでも有名だ。それが女子受けがいいというのが気に入らないけど。
「お前は本当に馬鹿だな」
ぐさりと心臓に矢が10本刺さった。
「このような点数を私が教えていながら取るとは、大した度胸だ」 「アヤナミ先生は何も悪くありません。私の脳の作りがおかしかったんだ思います」 「ほう、わかるようになったか」
言わないと鞭振るうからだろおおお!!
「何か、言ったか?」 「いえ何も」
読心術が使えるんじゃないかって、いつも思う。
「あの、成績の方はなんとかしてみせます」 「ああ。そうして貰わなければ困る」 「では、私はこれで…」 「待て。話はまだ終わっておらぬ」
帰りたい。なんでいつも帰ろうとすると止めるの。
「鞄の中を見せろ」 「は?」 「早く中身を全部だせ」 「は!?」
アヤナミ先生は席を立つと、私を見た後、鞄を見つけてそれを直ぐに取った。そしてチャックを開けて中身をがらがらと出し始めた。
「ちょっとおおおおおお!!何するんですか先生!!成績の説教のあとは持ち物検査!?言っておきますが変なのは持って来てませんよ!?」 「…………」
何かを探している様子のアヤナミ先生。無かったのを確認すると、溜め息を吐いた。それは少し残念そうにも見えた。
「お前はチョコの一つも持ってきていないのか」 「あ、今日はバレンタインでしたっけ?みんな没収されてましたねえ」
思い出して上を向く。
「でも、残念でした。持ってきてるわけありませんよ。アヤナミ先生に目を付けられてるんだから、持ってこれるわけがありません」 「…………」 「先生?」 「お前にしては利口だな」 「それ、褒めてるんですか」
がたっと席を立って、出された荷物をバッグに戻していく。全く、先生も大げさな。
「もういいですよね」 「ああ」
さようなら、と扉に手をかける。
「ああ、忘れるところでした」
振り返って、アヤナミ先生に向かって、小さな箱を投げる。アヤナミ先生は難なくそれをキャッチして、蓋を開けた。 途端、目を丸くした先生。あれは嬉しかったのかな。…そんなわけないか、
「アヤナミ先生に目を付けられてるからこそ、先生にだけは持ってきてあげましたよ。そしたら怒らないでしょう?」 「私が怒らないと思うか?」 「え、もしかして、それもタブー?」
ヤバイと思って扉を開けると、扉は勝手に閉じた。後ろを見れば扉に手をかけているアヤナミ先生の姿。顔を引きつかせて、アヤナミ先生が手を上げたと同時に襲ってくる衝撃に目を閉じた。
「!?」
思っていた衝撃はなく、唇に何かが触れた気がして目をばっと開けた。
アヤナミ先生の顔がとても近くにあった。息が触れるくらい近くに。 私は先生にキスされている?
唇が離れると、私は間抜けな顔で先生を見ていた。
「あ、アヤナミ先生。これは、夢ですか?」 「残念だが現実だ。どうやらお前の馬鹿がうつったらしい。もう後戻りは出来そうに無いな」
にやりと口角を上げた先生。どうやら先生は学校一恐ろしくて、容赦なく鞭を振るい、毒舌を吐き、超サディスティックで、女子受けがいいだけではなかったらしい。アヤナミ先生の学生時代は優等生なんだろうと思っていたけど、どうやら不良の勘違いだ。
「ナコ、お前を放すつもりはない。せいぜい覚悟しておくことだ」
これからが、波乱万丈のようだ。
企み (出会った頃から、呼び出されていたのは)
--------------- 先生萌え。数学にしちゃいました。なんか。なんでもよかったんですがね。 教科の出番はないからww
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