カチカチカチ。 携帯のボタンを押す音が誰もいない教室にこだまする。 暗闇の中で携帯画面だけが明るく、私を照らしている。それはまるで人魂のようにも見える。きっと先生が入ってきたらびびるのは確実ね。 そう思っていた矢先、教室の前の扉の近くで叫び声が聞こえた。
ほら、やっぱり。
「お、お前、電気もつけねえで何してんの。あ、さっきのはアレだぞ、お前が驚かねえようにわざと叫んでだな、」
ぶつぶつと言い訳をする銀八先生。
「それはありがとう、先生」 「おう」
そう言えば満足したように笑った。
「つーか、なんでまだ残ってんの?」 「先生を待ってたから」 「だから待つなっつっただろ、親御さんが心配すんだろが」 「先生が凄いいい人なんだって話したらそれなら任せられるって言ってた」 「いや、任されられても…」
苦笑して頭の後ろをかくしぐさをする銀八先生。
「ねえ先生。明日は何の日か知ってる?」 「さあな、余計なもん持ってくるなよ。上がうるせえから」 「知ってるんじゃん」 「知らねえよ、学校内ではチョコの持ち込み明日限定で禁止」 「なんで明日限定?お菓子に持っていけなくなる」 「俺が知るか。バカ校長に言え」 「そうするか、」 「え、本気で言う気?言うわけないよな、それに俺が関わっているって言ったら…」 「給料下がっちゃうね」 「絶対言うなよ!!俺のためだからな!!絶対だぞ!!!」
こいつにしゃべった俺がバカだった、と言い始める銀八先生。面倒くさいけど、面白い先生。 明日は彼にチョコレートをあげて、告白するんだ。たとえ、叶わない恋でも、私の気持ちだけは知っていて欲しいから。それが原因で意識して、避けられても、意識してくれるようになるのなら、私は構わない。そうやって私を見て、私を好きになってくれたらいい。無理かもしれないけど、でも可能性はある。卒業したら、一緒になってくれるかまた聞けばいい。先生が無理だと言っても、私の心が変わっても、私はもう我慢できない。すぐにこの気持ちを明かしたいんだ。
「んだよ、そんなに見て。あんまり見てると惚れちまうぞ、俺かっこいいから」 「うん、知ってる」 「……あ、そう」
ずっと見てたせいで惚れた。もっと早くにその言葉を言って欲しかったものだ。
「今日はもう遅いし、送ってやる。今日だけだからな」 「先生ってば結局優しー!」
背中に抱きつけば、動揺しながらも軽くあしらう銀八先生。いつか振り向かせてみせるから。 その時まで。 明日が少し、怖くなった。 でも、
自問自答 (ほら、答えは決まってる)
--------------- 甘いのばかりだったので、切ないものも。
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