バレンタインデー企画 | ナノ
「ねえ君達、なこたん見なかった?」
「きゃあ!ヒュウガ君よ!」
「南子ちゃんならまだ教室にいたわ」
「そっか。ありがとね☆」

廊下で尋ねた子達を見送って、俺は彼女がいる教室に向かった。

教室の窓からは夕日が差し込み、幻想的な空間を作り出していた。ぐるりと教室の中を見渡してみるが、なこたんは見当たらない。もう帰っちゃったかな。
誰もいないせいで、靴音が少し響く。教卓の前に立って肘をついて今日の出来事を振り返ってみた。

朝から学校に着けば、女の子達からチョコをたくさん貰った。一緒にいたアヤたんも渡されていたけど、貰っていなかった。それなら俺が貰ってあげるのに、もったいないなあ。
でも一番俺が欲しいのは、なこたんからのチョコ。去年、告白して付き合い始めた俺達。でもそのときはバレンタインは過ぎていたから、まだチョコは貰った事がない。彼女からのチョコだけを貰うのが彼氏としての礼儀だとも思うが、断るに断れないんだよねえ。あげてくる子達も、俺がなこたんと付き合ってるのは知っているはずだし。というか、俺が言いふらして見せびらかしたんだけど。だって、なこたんに変な虫がついたら大変だからねえ。
だから自分の教室に行かずになこたんの教室を先にまわったんだけど、なこたんはちっとも俺に気付いてくれなくて、コナツと一緒に楽しそうにおしゃべりをしていた。俺があんまりにも睨んでたせいでコナツが青ざめてたけど、それでも気付かないなんて、なこたんは俺を嫌いになったのかな。やっぱり、彼女以外からチョコを貰うなんて駄目だったかなあ。

はあ、と溜め息を吐くと、うーん、と何処からか唸り声が聞こえた。
もう一度見渡してみると、後ろの方の廊下側の端の席に座っているなこたんを見つけた。隣の席まで行ってそこに座ると、俺の彼女はすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。

「なこたん」

呼んでみたが、深く眠っているのか起きる気配はない。俺を二回も無視するなんてひどいなあ。

「なこたん…」

頭を撫でて、よく顔が見えるように耳に髪をかけた。

「可愛い寝顔」

ふにふにと頬を突っついてみるが、やっぱり起きない。さて、起こしてしまおうか、そっとしておくか。

「南子」

がたんっ、と勢いよくなこたんが立ち上がり、なこたんが今まで座っていた椅子が倒れた。俺は突然のことに驚いて、目をぱちぱちさせる。

「ひゅ、ヒュウガ」
「おはよう、なこたん」

すぐに笑顔を作って笑いかければ、顔を赤くして照れるなこたん。

「なんでいるの」
「だって俺、なこたんの彼氏だもん」
「……寝顔見た?」
「うん☆」

ショックだったのか、机につっぷしてしまった。

「可愛かったよ?」
「……襲われなかっただけいいと思うようにする」
「ひどっ!俺そんな風に見られてたわけ!?」
「そうじゃないけど…」

がさごそと机を探り出したなこたんは、机の上にいっぱいのチロルチョコをばら撒いた。

「どうしたのこれ」
「集めたの!今日のために!」
「凄い…ほとんど全種類ある」
「まあ、せっかくだし、ヒュウガにあげる」

顔を赤らめたままそっぽを向いたなこたん。表情が見えないから、今どんな顔をしているのかわからないけど、きっと照れてるんだ。

「一つ食べていい?」
「どうぞ」

ぱくりと口に入れると、甘い味が広がった。

「これ、今日の為に用意してくれたの?」
「た、たまたまだよ!偶然今日渡しただけ…」
「朝無視したのは?」
「コナツがチロルチョコ持ってるって聞いたから!」
「ふーん?じゃあこれ俺のためのチョコじゃないってこと?」
「ひゅ、ヒュウガのです」
「そっか。じゃあ誰にもあげない」
「喜んでくれた?」
「もちろん。ありがとう、なこたん」

えへへ、と照れ笑いを浮かべる彼女。

「南子をくれたらもっと嬉しいよ」

俺は彼女の耳元に口を寄せて囁くと、唇を合わせた。優しく南子の後頭部に手を持っていき押さえて支えると、それは深くなった。



 ちょこれいと
 (甘くとろける恋のお菓子)

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学生ヒュウガver.!
名前を漢字にしようか迷いました。どっちがいいんだろうな、


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