心配してくれていたのは、銀さんだけじゃなかった。
「えーと、ご心配をおかけしました」
銀さんと一緒に案内された部屋に入ると、ヅラともっさんと高杉さんが座って待っていた。銀さんも三人の隣に座り、私は四人の前に座った。
そして、土下座した。
「全く、南子がいなくなったと聞いた時は天人に攫われたのではないかと・・・無事で良かった」
はあ、と溜息を吐きながらもヅラは優しく微笑んで許してくれた。ヅラを桂さんと呼びたくなった。
「そんで、どこに行っちょったんじゃ?」
明るい高めの声でそう言ったもっさん。私の思い込みでなければ、私を責めるつもりはないとわざとそうしてくれたのだろう。本当にこの人達はなんて優しいんだ。
「町に行ってました」
「町?どうやって町まで?近いが道がわかりにくくなってたはずだが。まして全く知らねェお前がわかるわけねェし、」
私が答えると直ぐに銀さんが驚きの声を上げた。
道がわかりにくくなって・・・だから戻れなくなったのか。
「信じられないかもしれませんが・・・シロとクロが、」
四人が誰だ、という顔で私を見た。
私はどこに行ったのか辺りを見回す。すると、
「にゃあ、」
自ら出てきたようだった。
「・・・え?シロと、クロ?」
確認の意味で銀さんが二匹の名を呼ぶ。それに答えるかのように鳴く二匹。
「見た目のまんまではないか!」
「いやつっこむとこ名前じゃねェよ!」
ヅラが大声を出してつっこむ(というかボケ)とほぼ同時に銀さんも大声でつっこんだ。新八がいないと大変そうだ。
「可愛い猫ちゃん達じゃが、信じられんのー」
もっさんはシロとクロを撫でながら苦笑した。
「・・・俺は信じる」
一人、私の話を信じてくれたメシアがいた!と目を輝かせて叫びそうになったが、声の主を見て、吹き出すしかなかった。
「高杉、お前大丈夫か」
銀さんが呆れた目で高杉さんを見た。
高杉さんは至って真面目で、もうすでに二匹を手懐けていた。
そのうえ二匹は三人にも媚びを売り、あっという間に三人も猫にメロメロ。私のときとは大違い。
「シロ、クロー私の方にも・・・」
「シャアアアアア!!」
「なんでええええええ!?」
私が手を近づけただけなのにこの反応。何が悪いの!?
「凄い威嚇っぷりじゃのー、アハハ」
「相当嫌われているようだな」
「仮にこいつらが賢くて町まで連れてける能力を持ってるとしてもよ、南子を誘導したとはどう考えても無理じゃね?」
「ふっ、こいつらは誰が一番偉いかわかってんだよ」
もっさんは笑ってばかり、ヅラは冷静沈着。銀さんの言うことはもっともで。高杉さんはもはや手遅れのようだ。
(猫の恩返し)
4人が早く帰ってこれたのは二匹のおかげだから良しとするか。
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