宴会は上手く行き、皆が喜んでくれてあっという間に時間が過ぎて行った。
今はもうほとんどの人が眠っていて、ちらほらまだお酒を飲んでる人もいた。
凄く静かな夜だ。明日から戦が始まるなんて考えられない。きっとたくさんの人が死ぬんだろう。でも銀さん達は絶対死なない。未来を知っているから安心出来るが、未来を知っているから胸が苦しくなる。銀さん達はこの戦に負けるということ。本当は皆わかっているのかもしれない。天人には敵わない。幕府も直ぐに開国してしまったし、自分達がやっていることは無意味であると。それでも可能性にかけて、武士道を貫くために。いずれにせよ、私が口を挟んではいけないこと。私はただ近くで支えてあげることしか出来ないのだ。それがもどかしい。
外に出て門の方まで歩いてみた。立て掛けてあった梯子を登り、空を仰ぐ。そこは綺麗な星空がいっぱいに広がっていた。
そういえばこの場所は銀さんともっさんが話してたあの場所じゃないか!
「眠れねェのか?」
感動していると登ってきた梯子の方から声が聞こえた。銀さんだ。
「目が覚めちゃって。銀さんは?」
「んー・・・俺もそんなとこ」
絶対嘘だ、と思いながらも隣に座り空を仰ぐ銀さんの横顔をみて危うく鼻血を出すかと思った。
「んな見んなって、照れんだろ」
私の熱い視線に気付いた銀さんが少し顔を赤らませながらこっちを向いた。ぐああああ可愛い!!白夜叉銀さんは純粋だから余計可愛いいいいいいいいい!!
「あんまりにも綺麗だからつい見とれちゃって」
「綺麗?」
「うん、夜の黒に輝く星に負けないくらい綺麗に輝く銀色の髪が、凄く綺麗だなあって」
銀さんはきょとんとして、直ぐに微笑んだ。
「それ言ったら南子もだろ」
「え?あ、そっかあ。私も銀髪だった。忘れてた」
「忘れてたって、普通忘れるか?」
「実は私のこの銀髪、染めたんだ。もとは黒なの」
「染めた!?・・・わざわざ銀色に?なんでんなこと、」
驚愕している銀さん。そういえば銀色に染めた時も周りに同じ事言われてたな。せめて鬘にしろ、とかね。
「ある人に憧れて、染めた」
「・・・ある人?」
そう、あなただよ、銀さん。
少しでも近づきたくて、何か同じものが欲しくて、
「大好きなんだ、その人のこと!」
すると銀さんは寂しそうな笑みを浮かべ言った。
「南子は凄ェな。俺は駄目だ。昔っから人と違う厭味の対象のこの髪が、色が、嫌いだった。でも今は少し好きになれた気がする」
そんな風に思ってたんだ。漫画の主人公で皆から人気者で当たり前のような、もはやトレードマークとも言えるその銀髪は銀さんにとって普通のことだと思ってるのだとばかり思ってた。銀さんはいつも表には出さないから・・・。
「人と違かろうが私は銀さんの髪、素敵だと思よ」
「・・・ありがとな」
笑った銀さんは今にも消えてしまいそうに見えた。
「南子のその髪も良いけど、黒髪も見てみてェなァ」
「え、」
「いつか見せてくれよ、俺らだけの秘密」
「うん、約束するね」
私は『ニィー』というようなめいいっぱいの笑顔で言った。ここに来て一番笑ったかもしれない。
銀さんはその後目を合わせてくれなくなった。でももう寝るぞ、って腕枕してくれた。きっと今日の夢は今までで一番幸せな夢になるんだろうな。
(隣で眠るのは夢見てた、)
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