次元の壁越えてゆくよ! | ナノ
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しん、と静まる部屋に幹部らしき人物が4人。

そして場に似合わず息苦しく思ってる私。


4人とはいつもの攘夷組。
だがそのときの4人はいつもとは違く、はっきり言って・・・居心地が悪い。

あの馬鹿でいつも騒いでる皆が、笑ってばかりの脳みそ入っないもっさんまでもが、真剣な表情で何か考え事してるんだもの!

銀さんはいつも通り何考えてるかわかんないけど、ヅラは辛そうに眉間に皺寄せて黙ってるし、高杉さんに至っては苛々して目が鋭くなってるし、もっさんは笑顔がない!

そんな沈黙を破ったのは銀さん。


「いつまでも沈んでんじゃねェよ。南子が困んだろ」

「・・・ああ」

「・・・・・・」

「すまんのー南子。おまんには関係ないのに」

「関係なくなんかないです!これでも今までお世話になってきたし。あの・・・何かあったんですか?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


3人とも黙り込んでしまった。

助けを求めて銀さんに目を送ると銀さんは私の頭を撫でてこう言った。


「戦が、始まる」

「戦…」

「今は休戦中だったんだが・・・今朝、天人から宣戦布告してきた」


桂さんが悔しそうに顔を歪める。


「くそっ!あいつらを逆に利用しやがって」


高杉さんが続けて怒鳴った。


「わしらの仲間のスパイが今朝方、帰ってきての、」


もっさんが目を細めてそう言った。

良かった、と言おうとして、高杉さんの言葉に、何も言えなくなった。


「顔はボコボコにされ、血まみれでな」


また部屋が重い空気に包まれた。

今度は私も。


スパイの人達は、わざと降参した振りをして、天人たちの仲間になった。そこで情報を入手し、ある程度集まったら抜け出す。そのはずだった。
しかし、天人たちは彼らが仲間に加わるときから見抜いていたらしく、敢えて知らない振りをしてこちらの情報を聞き出そうとした。

天人たちに自分たちがスパイだとばれていることに気付いた時には拷問にかけられ、なんとか逃げ出したが、帰ってきたのは一人だけだった。

あとの仲間はその一人を逃がすために殺されてしまったらしい。

その一人は私達に危険を知らせると、役目を果たしたかのように倒れて死んでしまったというのだ。


私は泣きそうになるのを堪えながらずっと顔を伏せて聞いた。
銀さんは私のことを心配してくれて、背中を撫で続けてくれた。でも、銀さんが拳を固く握り締めて、歯を食いしばって堪えていたことを知ってる。


その時の高杉さんの話し方は凄い憎悪に満ちていた。

それはきっとスパイに行った人たちの中に、鬼兵隊の人もいたということも理由のひとつだろう。


話が済んで落ち着いたら、話しは私に向けられた。


「明日から俺らは戦に行く。多分・・・しばらくは帰って来れねェ」


銀さんの大きな手が私の頬を片手で包んだ。


「お前には待っててもらう。ただ、この場所はやつらに知られちまった。だから、残る仲間と新しい場所に行って、待ってて欲しい」

「うん、わかった。待ってる」

「出発は今日の深夜。敵に悟られないようにここで私達と別れる。・・・大丈夫か?」

「大丈夫だよ、ヅラ!」

「ヅラじゃないかつるああ」


ヅラのお決まりの台詞をことごとく高杉さんが打ち消す。


「南子、死ぬなよ」

「何言ってるんですか!高杉さんの方が危険なのに・・・」

「俺は、死なねェよ。お前が待っててくれるんだろ?」

「もちろん」

「わしらは最強じゃき、死にゃあせんぜよ!のー?高杉」

「頭をくしゃくしゃするな毛玉!」


なんだか少しだけいつもの皆に戻った気がした。

やっぱりこの人達は笑って騒いでる方が似合ってる。


「そうだ!出陣祝いしましょう!」

「お、いーねーそれ」

「そうと決まれば酒じゃー!酒をたくさん持って来るきー!」

「安い酒は飲まねェぜ」

「あんまり飲み過ぎるなよ」


微笑ましくみんなを見ていたら、隣に銀さんが座った。


「あれじゃもう酔っ払いみたいだよ」

「そうだな」


隣の銀さんを横目で盗み見。いつもの優しい表情だ。


「さ!早く行きましょう銀さん!」

「・・・ああ」





(精一杯の花向け)
(どうかこの人達から笑顔が消えないように)





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