ガバッ
「今何時!?」
あたりが真っ暗だった。相当寝続けてしまったのか。
高杉さんの姿は無くなっていた。呆れてどこかに行ってしまったんだろう。少し寂しい。
「あれ・・・これ、羽織・・・?」
気付かなかったけど、自分に羽織がかけてあった。・・・唐草模様のいつも漫画やアニメで見ていたものそのものだった。
べベン、
三味線の音色だ。
「高杉さん?」
「目が覚めたか」
戸を開けると縁側で月光に当たって三味線を奏でる高杉さんの姿があった。
ちょ、美しすぎる。
「銀時たちがてめーを探し回ってたぜ」
「銀さんたちが?」
どうやら高杉さんの部屋に籠もっていた+ずっと寝てたせいでいなくなったと勘違いされたらしい。
高杉さんが自分の部屋で寝てると言うまでみんなで探し回ってくれていたそうだ。
後でお礼を言おう。
「高杉さんって上手ですよね、三味線。それに似合ってるし」
「あたりめーよ」
「・・・誰かに教わったんですか?」
自意識過剰なところはあえてスルーさせてもらった。俺様高杉様だもんね。
「・・・昔、先生に教わって褒められた事があってな、それからずっと弾き続けてる」
松陽先生のこと、だ。
「・・・いい思い出ですね」
「・・・・・・」
高杉さんは、どこか懐かしいような、悲しいような目で月を見ていた。
「弾いてみるか?」
「え、いや結構です!」
壊したら後が怖い。
「ククッ壊したら弁償してもらうから安心しろ」
どこが安心!?つか心読まれた!
「まずは構えてみろ」
「こんな感じ?」
「ああ、そんでここを押さえて」
私の手に重ねるように高杉さんの手が置かれた。は、恥ずかしい。熱くなってきた・・・至近距離だし。
「聞いてんのか、」
「は、はい!」
「ここを押さえたまま弾く」
ベン、
か細いけど、しっかりした音が響いた。
「わぁ、音が出た!」
「ククッ、そりゃ音は出るだろ」
「そうじゃなくて、感動したんです!」
「そうかい」
「今度、高杉さんの三味線聞かせてくださいね」
「・・・ああ」
「あとこれ、羽織ありがとうございました。今日は迷惑かけたし、もう自分の部屋に戻ります」
おやすみなさい、と少し離れてから、「待て」と言われた。
なんだろうと振り返ると近くに高杉さんがいたので吃驚した。
「んなに俺が怖いか、」
「え?いや、瞬間移動したのかと思って・・・」
「・・・・・・」
気まずくなって下を向いた。すると頭に手が置かれる感触がして、また上を向いた。
高杉さんと目線がぶつかる。
「今日言ってた・・・」
「・・・?」
「・・・てめーを嫌いだって・・・」
「が?」
「・・・撤回しろ」
「はい。・・・え?」
高杉さんは照れくさいのかそっぽを向いてしまった。
「ええええええええええええええええええええ!?」
「そんなに撤回して欲しくねェか?」
「滅相もございません!!嘘!高感度アップした!うふふ」
「・・・きめェ」
「いまならどんな事も許してあげますよ、むふふ」
「・・・さっさと逝け」
「ちょ、漢字いいいい!?」
「・・・らしくねェ、な」
南子が部屋に戻った後、高杉は一人呟いた。
(第一歩)
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