ヒュウガ先輩が復活すると、逃げるようにコナツを連れて向こうに行ってしまった。手合わせしてあげると言っていたが多分逃げる為の口実だろう。
04::誤解から生まれる関係
そして私は取り残されアヤナミ先輩と二人きり、というわけではないが同じようなもの。今日が私の命日かもしれない……。
「安心しろ、貴様の墓参りには毎日行ってやる」
「どこが安心!?」
「この私がわざわざ毎日出向いてやるのだ、安心だろう」
「うわー何様俺様アヤナミ様炸裂」
厭味っぽく言ってやれば、持っていた竹刀を握り直して今にも殺されそうな殺気だったので私は顔を青ざめ即座に謝った。私は悪くないはずなのにあの日がフラッシュバックして抵抗する気はとうに失せた。
「ところでなんでアヤナミ先輩が剣道部にいるんですか?」
確か部活は入っていなかったはず。だからこそ私に教えられたんだろうし、なんとなく、アヤナミ先輩が剣道って似合わない。剣でいうのならどっちかというとフェンシング……も似合わないか。
「アヤたんは臨時で助っ人お願いしたんだよー」
いつの間にか帰ってきてたヒュウガ先輩が私とアヤナミ先輩の間に入ってきた。
さっきまで逃げてた癖に、きっと安全が確認されたと思って戻ってきたんだろう。
「助っ人?」
「新入部員を相手するのに今日に限って部員足りなくってねー、それでアヤたん一応剣道出来るし強いからお願いしたんだよ」
説得するの大変だったんだからね、と泣きながら私の肩をゆさゆさ揺さ振るヒュウガ先輩。気持ちはわかる。
「あの……」
ヒュウガ少佐と一緒に戻ってきてさっきから気まずそうにしていたコナツが言いづらそうに言葉を発した。
「南子はアヤナミ先輩とどういう関係?それに、ヒュウガ先輩とは……さっき…その、こ、恋仲って」
少し照れながら言うコナツ。うん、可愛い。だけど勘違い。
「待った、ヒュウガ先輩はただ中学が同じなだけでありお兄ちゃん的存在としか思ってないから!」
「えーあんなことやこんなことまでした仲じゃん☆」
「……ヒュウガ」
「嘘嘘!冗談だから竹刀納めてアヤたん!!俺となこたんは同中で先輩後輩だけど仲良い友達みたいなもんだよ!」
慌てて訂正したヒュウガ先輩。たまにはアヤナミ先輩に感謝だね。
「じゃあアヤナミ先輩とは?」
コナツがもう一度聞き直してきた。
するとヒュウガ先輩に肩を叩かれて一つの女子の所を指差した。何だろうと思ってその人たちも自分とアヤナミ先輩の関係を知りたがっていると気づいた。もっと周りを見渡せば、どうして今まで気づかなかったのだろうか、たくさんの人たちが興味深そうな、少し驚いた様子で私たちを見ていた。
高校でもアヤナミ先輩は変わり種なのか。近寄り難いというか、きっと私が珍しいのだろう。ヒュウガ先輩は同世代で入ってきたうえ、学校も同じだったし多分もとから仲が良い(と言えるか不安だが)と思ったのだろう。
皆から注目されていることに自覚したら、改めて恥ずかしくなった。アヤナミ先輩は慣れているためどうも思っていないようだが。
「……あんまり言いたくないんだけどな、」
「なんでー?」
ヒュウガ先輩が暢気に聞いてくる。
だって私の一番昔から気にしてることだもん。
「大丈夫、たとえどんな関係でも友達でいるよ!」
ちょ、コナツそれどういう意味。
そしてコナツはそう言ってだんだん近付いて来た。ふざけてヒュウガ先輩も。殴っていいか。
周りも何なんだとざわつき始め、逆に言いづらい。どうしようと困っていると追い詰められ、背中が何かにぶつかった。
後ろを振り返るとこちらを見下ろしているアヤナミ先輩がいた。
ヤバい、早く言わなきゃ紛らわしいことになって殺される。
そう思って口を開こうとした時、不意に後ろから手が伸びてきて、抱きしめられた。
その手がアヤナミ先輩のものだと気付いた時、アヤナミ先輩の発した言葉に、声を失った。
「南子は、私のもの、だ」
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