47/66
それは唐突に言われた。
「ナコたん、ピクニックに行こう!」
「はい?」
上機嫌なヒュウガ少佐は私の肩をがしりと掴んで言った。サングラスの奥の目はきらきら輝いていた。
「いや・・・そう言われましても、ここの主導権を握るのはアヤナミさんなのでは?」
「アヤたんには事前に許可もらってるよ!他のメンバーにも伝えてるし、あとはナコたんだけなんだ」
「え、そうなんですか?」
「で、行く?行かない?行くよね!」
「いや私まだ何も言ってな」
「そうと決まればほらほら、早く準備する!あ、これ着てね」
じゃあまた後でね、と洋服だけ渡して行ってしまった。前日くらいに言ってくれると助かるんだけどなあ。
着替えて持ち物(ほとんどないけど)を携えてみんなが待っているであろう飛行場に向かった。
案の定みんなはそこにいた。どうやらあのでかい飛行船、リビドザイルに乗っていくらしい。とはいえ、ピクニックごときでリビドザイルになんか乗ったら上の人達からたたかれるのは承知の上(アヤナミさんくらいなら職権乱用できるけど性格からしてピクニックごときでそんなことをするつもりはないらしい)。それでもリビドザイルで行けるのは、今回、上の偉い人たちに代わってアヤナミさんが大事な会議に出席しなくてはならなくて、ピクニックはそのおまけ。会議場に選ばれた土地が自然に囲まれた綺麗なところらしくて、会議が終わり次第、自由時間を過ごしていいと珍しく休暇をもらえたため、行けるのだという。唐突だったのはその命令を受けたのが今日の朝だったからだと後でコナツさんに聞いた。
「ナコたん、俺が渡した洋服は?」
「ああ、さっきまでは着てたんですけど、さすがに場違いな気がして着替えました」
「ナコなら大丈夫なのに。それにここで一番偉いのはアヤナミ様だもん」
「そうですか?じゃあピクニックに行くときになったら着替えます」
がっかりしてぶーぶー言うヒュウガ少佐とクロユリ中佐。クロユリ中佐がやるとかわいいのだがヒュウガ少佐は止めたほうがいいと思う。さすがの私でもそれは萌えない。
「目的地までどれくらいかかるんですか?」
「うーん、1、2時間くらいかなあ」
「そうですか・・・じゃあ私、邪魔になりそうですから(居づらいので)部屋に籠もってますね」
「着いたら僕が呼びに行ってあげる!」
「ありがとうございます」
クロユリ中佐の笑顔につられて笑って、部屋に向かった。この船は本当にでかいし広いし便利ですごくいい。やることもないから寝ていようか。
「ナコ、ナコ」
ゆさゆさと誰かが私を揺さぶっている。うっすら目を開けてそれを確認すると、満面の笑みを浮かべて目を輝かせたクロユリ中佐だった。
「すいませんわざわざ」
「いいから早く来て!」
「わかりました。でも一度着替えたいんですが・・・」
「それなら先に言ってよ!どうぞ!」
「いや、どうぞと言われましても、その、」
「?」
そんな純粋な瞳で小首を傾げないでくださいいいいい!!
クロユリ中佐マジ天使!なんか理性飛びそう!
「失礼します。クロユリ中佐、ナコさんが着替え終わるまで外でお待ちになりましょう?」
「ハルセ!うん、わかった。またねナコ」
「はい、また後で。・・・ハルセさん、ありがとうございます」
「いえ、私は何も」
かっこいい!ハルセさん紳士!絶対執事とか似合うよね!
*前 次#