TWIN | ナノ
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最近倒れてばかりいるような気がするのは気のせいではないはずだ。

私は貧血で倒れるような、か弱い乙女ではないし(自分で言って悲しいけど)、どちらかといえば、元気で風邪とかもめったに引かないような女子らしからぬ、男勝り・・・とまではいかないかもだけど、そんな女子だ。だからこうも倒れてばかりいると、調子が狂う。・・・疲れているんだ、きっと。そう考えることにした。
そもそも、私は自分の元いた世界から、いきなり別の世界に来たわけであって、今はもうだいぶ慣れては来たけど、でもやっぱり自分の居場所はまだまだ不安定で。そしてよくよく考えてみれば、この世界に来てから私は状況を整理する時間とか、ブラックホークの皆さんと馴染めるようにちょっとした団欒を過ごすとか、そんな時間は無かった。要するに休んでいないのだ!ここまで突っ走ってきて、だからこそ疲れが出てばたばたと倒れまくり、皆さんに迷惑がかかってしまっているんだ。アヤナミさんがせっかく休めと言ってくださっていることだし、私もここで一回セーブして休憩していいと思うんだ。というか、そうしたほうがいいと思うんだ。だからさ、


「あの、眠らせてくれませんか?」

「え、ナコたん眠りたいのー?」

「じゃあ僕が絵本読んであげるよ!」

「クロユリ様、それはよく目が覚める絵本です」

「それなら毛布を増やしましょうか!」

「ではよく眠れるお飲み物をどうぞ」


上からヒュウガ少佐、クロユリ中佐、ハルセさん、コナツさん、カツラギさん。
・・・カオスだ、この状況。
アヤナミさんに会って眠った後、起きたとき、すでに皆さんはいた。アヤナミさんは不在らしく、ということはこの状況を何とかしてくれる人がいないわけで。いつもならコナツさんやハルセさん、カツラギさんがその立ち位置のはずなんだけど、ハルセさんはクロユリ中佐一番だし、コナツさんはなんかテンパって意気込んでいるし、カツラギ大佐はとにかく試作品のドリンクのことで頭がいっぱいのようだ。
助けてくれ、もう誰でもいいから、というか、アヤナミさん早く戻ってきてくださいマジで。もうアヤナミさん戻ってきてくれるならスパルタでも鞭でも耐えられ・・・ないな。


「あー・・・頭痛くなってきた」

「じゃあ俺が添い寝してあげる☆」

「はっ!?」


ぎし、とベッドのスプリングを鳴らして布団の中に入ってきたヒュウガ少佐。どうしよう心臓爆発する。


「あっ、ヒュウガばっかずるい!」


何を思ったのか、クロユリ中佐まで同じように布団の中に入ってくる。


「ヒュウガ少佐!」

「クロユリ中佐!」


コナツさんとハルセさんが叫ぶ。助け舟がキター!と思ったのも束の間、そんな期待はことごとく裏切られた。


「ヒュウガ少佐、僕の分までナコさんを暖めて下さい!」

「クロユリ中佐、私の分もお願いしますね」

「ちょ、ちょちょちょっと待ってください!!つっこむところですよそこは!!おかしいです!今日二人ともおかしいですよ!?」


私は正論を言っているはずなのだが二人は小首を傾げていた。・・・かわいいから許す!


「ナコ、あったかい?」


ぎゅっぎゅっ、と抱きしめてくるクロユリ中佐が可愛い。萌え殺されそうだ。襲っていいか。


「ぷぎゃああああ!!」

「あははっ、ナコたんったらなんて声出してるのあははっ!」

「ヒュウガ少佐セクハラですよ!変なとこ触らないでください!!」

「えーだってせっかくおいしい状況だし、」


おいしい状況じゃありません!と肘を腹に入れるとうっ、と丸くなった。仕返しできたから満足!・・・何だか間違っているような気がする。根本的な部分を間違っている気がする。


「それにしてもナコたんはもう少し危機感を持つべきだと思うよ?俺が言うのもなんだけど」


そうだそれだ!普通の人は異性を簡単にベッドに入れさせないよね。私も普通の人だったはずだけど、どうやらこの人たちと一緒にいたせいでおかしくなってしまったようだ。それに私の場合男性恐怖症だから男の人と一緒の布団で寝るなんて考えたこともないしやるわけがない。そういえばあんなに男性が怖かったのに、どうしてこの人達だと大丈夫なんだろうなあ・・・年が離れているからかな・・・いやでもしかし・・・、


「もうどうだってよくなってきました。・・・それにほら、クロユリ中佐もいますし」

「すぴー」

「あれ!?寝てる!?私が眠りたかったのですが!!」


隣を見れば天使のような寝顔ですやすや眠りに入っているクロユリ中佐がいた。


「そういえばお昼寝の時間でした」


そういうとハルセさんはクロユリ中佐を抱っこして寝かしてきます、と出て行ってしまった。


「二人きりってドキドキするねっ☆」


自然に出来てしまったシチュエーション。私の顔を正面から見下ろすようにしてそう言ったヒュウガ少佐に私は固まってしまった。ち、ちちち近い!!こんなに近かったのかっ!よく耐えていられたな・・・!!
だがしかしこのまま耐えることはさすがに出来ないのでどうにかして変態少佐をベッドから引きずり出さなくては。


「たたたた助けてくださっ、コナツさんっ!!」


必死に(涙目で)なりながらコナツさんを見つめれば、コナツさんははっとしたようにどこからか、たくさんの釘が刺さったバッドを取り出した。


「こ、コナツ・・・?」

「少佐・・・セクハラ紛いのことだけは許しません!!」

「ま、待ってコナ痛あああ!・・・っ、最初はコナツも俺に賛成してたじゃん!」

「それとこれとは話が違います!!」

「そんな理不尽な!」


やっぱりどこかおかしいコナツさん(目が怖かった)は、バッドを振り回しながら、まさに釘バッドの達人の如く(釘バッドの達人なんて知らないけど)、ヒュウガ少佐を追い込んでいき、終いには二人一緒に部屋を出てどこかに行ってしまった。


「・・・静かになりましたね」

「そ、そうですね」


冷や汗が背中を伝った。

カツラギさん貴方まだいたのですか・・・。存在を忘れていたことは申し訳ないと思うけど、正直いなくなっていた方が良かったなんて思ったりして、


「では私もそろそろ退席しましょうか」

「是非そうしてください!あ、いえ、その・・・ほら!お仕事とか忙しいでしょうし、私のために時間を使わずにお仕事とご自分のことに時間を使ってください!」


にこりと微笑んだカツラギさんは聖母のようだった(男だけど)。しかしその裏の笑顔に気付いたとたん、寒気が全身を襲った。


「ならこの飲み薬だけでも飲んでくださいね」

「は、はい・・・」


やっぱり飲まなくてはならんのか、
その、ビビットピンクの液体を。つか薬なのかそれ!?


「えーと、何でどう作ったらその・・・こんな素敵な色に?」

「ふふ・・秘密です」

「そ、そうですか〜ははは」


ますます怪しいいいいよおおおおおお!!!その含み笑いは何ですかあああ!!


「味の方はちゃんと口に合うように作ってありますから大丈夫ですよ」

「・・・は、っていうのは・・・」

「ああ、ちょっと効力が本当に効くのか不安でして」


効力・・・だと?何の効力?薬だとさっき言ってたし、疲れた身体を元気にするとかそういう効力?いやしかしカツラギ大佐のことだ、何考えてるかわからない。でもちょっと気になってたりするんだよね。


「じゃあ少しだけ」

「それは良かった。どうぞ」


手渡されたビビットピンクの液体が入ったグラスを口に当て、少し傾ける。と、同時にカツラギ大佐の手が伸びてきてグラスは少しどころか90度に傾けられた。


「ごほごほっ、カ、カツラギ大佐!何する、んですか!」

「全部飲んでもらわないと効力が効かないかもと思いまして・・・」


むせる私の背中を優しくさすってくれるカツラギ大佐。やってることが矛盾してるのだが。


「では、私は本当にこれで失礼しますね」

「は、はあ・・・」


そう言って本当にカツラギ大佐は空になったグラスを持って出て行ってしまった。


「やっとゆっくり眠れる・・・」


いつも以上に疲れたせいでため息をつきつつも、心の中では喜んでいる自分がいた。








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