TWIN | ナノ
23/66

「セブンゴーストはかつてこの地に悪しき死神が降り立った時、天より遣わされた制裁部隊である。セブンゴーストはフェアローレンの封印を守り続ける為にこの世界に留まり、この世界で人と共存する為に人の似姿を以て暮らすようになり、やがて人と繋がり家族を築いたと言われている。つまりゴッドハウスはセブンゴーストの血を受け継ぐ『神の一族』である。ゴッドハウスは『皇帝』と『教皇』を選定するという最も重大な責任を負っており・・・ああああああああ!!長い!!」


この世界の歴史や神話の本(この前借りた本をもう一度借りてきたのだ)を読むのが日課となり、今日もまたそれを読んでいた。が、


「お腹が空いた」


ぐううう、と腹の音が聞こえる。恥ずかしかったがどうにも出来ないので知らないフリをする。
いつもはカツラギ大佐が料理を作ってくれていて、それを食べていたが今回は私の腹時計が狂っていたらしく、カツラギ大佐が準備してくれる時間よりも早くお腹が空いてしまった。ここにはお菓子も無いしね。


「じゃあ俺と食堂にでも行こうか?」


私の座っていたソファの近くに、少し前から椅子を持ってきて座っていたヒュウガ少佐がそう言ってくれた。


「俺もなんだかお腹空いてきたし」

「でも、食堂なんかに私が行っても大丈夫なんでしょうか?」

「食堂のメニューって、種類が豊富で凄く美味しいんだよ」


ニコニコと例えば、と食堂のメニューを教えてくれた。
かなりめちゃくちゃ豊富だった。

というわけで、


「変装してでも何が何でも行きます!」

「ナコが行くなら僕も行く!」

「クロユリ様が行かれるのなら私も」


と、クロユリ中佐とハルセさんも加わった。


「え〜・・・せっかく俺とナコたんだけで楽しもうと」

「コナツさんもどうです?ご一緒しません?」

「いいですね、行きます」


筆を置き、爽やかな笑顔で了承してくれた。
ヒュウガ少佐は不満の声を上げ続けていたが、大体この人の性格をわかってきた私はそれを普通に無視する。ヒュウガ少佐はそんなつまらないことでいちいち怒らないし、ただ構ってほしいだけなんだと思う。特にアヤナミさんとか。
以前の私が殺されるかもしれないと全部反応していたことが、可笑しくて少し笑える。


「カツラギ大佐はどうです?」

「私はご遠慮しておきます」

「ほら、みんなカツラギ大佐みたいに遠慮しなよ!」


私はヒュウガ少佐に触れず、再びカツラギ大佐に尋ねた。


「どうしてですか?」

「実は二時間程前に作った試作品の羊羹を食べ過ぎてしまいまして・・・お腹いっぱいなんです」


眉を下げ苦笑するカツラギ大佐。


「それは残念です。また今度誘いますね」

「すみません、その時は喜んでご一緒させてもらいます」


にこりと微笑を浮かべ、カツラギ大佐は言った。
な、なんて紳士的な人なんだ・・・!


カツラギ大佐から離れ、最後に唯一まだ誘ってない人物の前に立った。


「アヤナミさん、ランチご一緒しませんか?」

「・・・私はいい。他の者と行ってこい」


書類から目を離さず断ったアヤナミさん。
やっぱりね。わかってはいたさ。
でもちょっとつまらないな。


「アヤナミさんってちゃんと三食食べてます?」

「最低限必要な栄養は摂っている。私に構わずさっさと行け」

「本当ですか?それってもしかしてサプリメントで、とかじゃないですよね」


図星だったのか黙り込んだアヤナミさん。


「ただでさえ顔色悪そうですし、細いんですから心配です。サプリメントとか絶対駄目ですよ、たまにはいいけど。でも手作り料理にしか得られないものもあるんですから」


来たくなったら来て下さいね、とだけ言い残してカツラギ大佐とアヤナミさんを除く皆で執務室を出た。


扉が閉まり静かになった執務室では、


「よろしかったんですか?アヤナミ様」

「何がだ?」

「ナコさん、アヤナミ様と一緒に食べたそうな顔してましたよ」

「・・・・・・」


カツラギがそっとアヤナミに語りかけていた。





*前 次#



<<とっぷ
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -