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「ザイフォンなんかなくたって生きていけるよ、今までだってそうだったんだ、ザイフォンなんかくそくらえ!」
「不愉快かつ耳障りな歌を歌うな」
「うあああああああああああああああ」
「・・・・・・」
せっかく吹っ切れる歌を歌っていたのにアヤナミさんに怒られた。
私はただいまブルー真っ盛りです。
「特訓すれば強くなるよ!」
ヒュウガ少佐が私の肩を叩く。そのサングラスを割りたい。
その時、執務室のドアが乱暴に開けられた。
少し歳がいった、いかにも偉そうな軍人さん達が入ってきた。
アヤナミ様が少し不愉快そうな表情をする。無表情にしか見えなくもないが。
アヤナミ様だけでなく他のメンバーもさっきと雰囲気が違う。
ぼー、と見ていたら、ヒュウガ少佐に手を引かれ、後ろに隠された。
何事ですか。
「何かご用ですか?」
「いや、実はアヤナミ参謀長官殿が何か調べているという噂を耳にしてね・・・」
「何を調べているのだ?また何か企んでるんではないんだろうね」
「ぜひとも聞きたいと思ってこうして来たわけだ」
三人のお偉いさんは怯えつつ、しかし威厳を保つような態度でいる。
調べものとはなんだろうか、私も気になる。
「・・・大したことではありません。コレの持ち主を調べているだけです」
そういって取り出した私の携帯。
私の携帯!?ちょ、あんたか持っていたのは!
「何だねそれは」
三人のうちの一人が尋ねた。
知らなくていいよ、アヤナミさんも言わなくていいよ、
「わかりません。ですから調べているのです」
まだマシな答えで良かった。アヤナミさんもたまにはいいこと言うんだな。・・・今アヤナミさんがこっち見た。え、考えてるのがばれた?
その後も幾度か売り言葉に買い言葉というように火花が出てるやりとりをしたが、三人とも結局アヤナミさんに言い返すことが出来ず、しかし帰ろうともしない。
ああ、この人達は嫌がらせしに来たのか。
「中身を見てもいいかな?」
ちらっとアヤナミさんがこちらを見た。
無理無理無理!と顔の目の前でばってんをつくり口パクでダメ、と言った。
「構いません」
いやあああああああああああああああ!!
言葉通じてない!こっちの世界でばってんはOKって意味になるのか!?いや絶対違う。だってアヤナミ様笑ってるもん!腹立つあの冷笑!
「・・・こ、これは」
「君ではないか!?」
「どういうことだこれは!」
ああああそれ以上何も言うなやあああああ!!
「詳細は先程述べた通り、わかりません。しかし、私を狙う輩かもしれません。ですから調べているのです」
すると、携帯を持っていた軍人が携帯を床に叩き付けた。
「そんなことはどうでもいい!どんな理由があれど君はウ゛ァルスファイルだ、勝手に行動することは許されん!」
そうだそうだ、と残りの二人も合わせる。
アヤナミは無表情のまま、だがブラックホークのメンバーは少しずつ苛立ち始めていた。
「ねえハルセ、アレ殺してもいい?」
「いけませんよ、クロユリ様」
「暇な人達だな〜」
「早く出て行けばいいのに・・・」
「ナコさん?」
ブラックホークの面子がそれぞれ言う中、カツラギだけが気付く。
「アレ、ナコたんがいない?」
ヒュウガが気付くと皆がそのいなくなった人物を探す。
今だ睨み合う上層部の面々とアヤナミ参謀長官。
そこに場違いなやつが一人、床に座っていた。
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