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目を開けると、見知った顔が目の前にいた。
「ア、ヤナミ・・・さん?」
「目が覚めたようだな」
周りを見渡すと、いつもの見慣れた環境が目に入ってきた。ここは私の部屋だ。そして、私は今ベッドに横になっている。
「あー・・・私、確か実技のザイフォンの練習でアヤナミさんと対決して、いきなり照明落ちてきて、それを破壊したら気絶したんでしたっけ?」
「憶えているのか」
「アヤナミさんに向かって倒れて、気絶するまではなんとか持ちこたえようと頑張っていましたので」
「・・・そうか。私に向かって倒れないようにするという努力はしなかったのか?」
「すみませんすみませんほんとすみません、なのでどうかその手にした鞭をしまってください」
「・・・冗談だ」
「はあ、アヤナミさんが言うと冗談に聞こえません」
「・・・別に構わぬ。いつでも私を頼れ」
「は、はい」
今まで見たことないような柔らかい表情で微笑んだアヤナミさんを見て、少し顔が熱くなった。
優しい手つきで頭を撫でられ、恥ずかしくて布団に顔を埋めた。
「あの・・・」
「・・・何だ」
「まさかずっと傍に居てくださった・・・とか、」
「・・・・・・執務室が煩かっただけだ」
ほんのささいな優しさに泣きそうになった。疲れているせいだろうか。
「・・・アヤナミさん、」
「・・・」
「変な夢を見ました」
「夢、か?」
「所々忘れて憶えていないところがあるんですけど・・・なんだか、」
続きを言おうとして、詰まった。何故だかこの続きを言ってはいけないような気がして、
「アヤナミさん、悲しくない、ですか?」
「?・・・ああ、」
「・・・そうですか。なら、いいです」
「・・・今はゆっくり休め。後で食事を持ってこさせる」
「・・・はい」
アヤナミさんの大きなごつごつした手で撫でられると、すぐに眠りに落ちた。
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