TWIN | ナノ
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そこは真っ暗だった。
光が一点も無くて、自分の身体があるのかすらわからないくらいに(触ったらあるからあるのだろう)。

それにしてもここはどこだろう。・・・生きてる・・・よね?もしかしてここはあの世なんてことは・・・いやいや、ネガティブはよくない!ポジティブに行くんだ、ポジティブに。


「―…ェア…レンに、道…教え…もら…たの。…それで…花…綺麗で…まるで…雪み…いだ…たわ」


突如、声が聞こえた。女の人の声が。聞いた事もないくらい綺麗で美しい声だと思った。その聞こえた方向に顔を向けると、さっきまでは無かった一点の光が見える。その声が聞こえた、光の方に適当に近づいてみれば(実際近づいたのかもわからなかったが)、神殿のような場所に、髪を片方に束ねた可愛らしい女の人がいた。さっきの声はこの人からだろう。そして、その女の人の視線の先には、男の人がいた。背中しか見えないから、顔は見えない。でも、女の人が楽しそうに笑って話しているから、きっと、微笑んで聞いているんだと思う。何故だか、根拠もないのに、そんな気がした。


「…そ…か、そ…は良か…な。…花、か…死…とはいえ、フェ…ローレ…も、自然を…愛す…だな」


話し声は聞こえるのだが、内容がノイズが入っていて聞こえづらい。どうやら女の人は道に迷ったのだろうか、誰かに道を教えてもらったらしい。そして道を教えてくれた人に花を見せてもらったらしく、それが綺麗で、雪のようだったらしい。・・・って、アレ?なんか似た様な台詞を私言ってたような気がするのは気のせいだろうか?
まあそれは置いておき、気になるのは男の人の台詞だ(いや、気になるのは他にも色々あるけど)。死神?と言ってた気がするんだけど、女の人の話に何の関係があるんだろう?全然関係なくないか?それに、自然を愛するんだな、って感心している様子で、それは死神が、って意味だろうか?本当に意味がわからない。


「…父様…許し…らったわ!…行って…るね」

「…いっ…ら…しゃい」


あれこれ考えていたら、いつの間にか場面が変わっていた。
先程と同じく、女の人が男の人に向かって笑顔で話している。これからどこかに行くのだろうか?父親に許してもらうとか言っていたけど・・・。
それに、男の人は微笑んでるけど、少し寂しそう・・・。一体何があったんだろう。この女の人と男の人はどんな関係なんだろう?


「うわっ!」


ざざざ、と地面が揺れるような感覚がして、ノイズ音が激しく響く。
次に映された場面は、神殿の・・・王様だろうか?玉座に座る王様らしき人と、男の人だった。


「天…長、イ…は、」


男の人が尋ねると、王様らしき人は、何も答えず、ただ静かに目の前に置いてある長方形の箱を指差した。


「…どう…て、こんな…と、に」


男の人はその箱の中を覗くと、顔を歪めた。
私にとっても、衝撃的な光景だった。
だって、箱の中身は、あの女の人だったから。それも、骨と髪と服だけになって。


「フ…アロー…ンだ!…が…の娘を…殺し…のだ!!」


王様らしき人が叫ぶと同時に、目の前がぐらりと揺れた。思わず目を瞑って、その場に崩れるようにしゃがむと、また知らない場所に居た。辺り一面荒れた大地。人の気配は全く無い。でも、何故だか初めて見る場所だと思えなかった。・・・どうしてだろう?
それでもそこは不気味で、すぐにここから離れたいと思った。・・・そこはまるで、地獄のようだったから。


「お…れ見つ…ぬ…、…界の…め、私に…か仕掛…たな」


たくさんの屍が山積みにされた上に、大きな鎌を持ち、フードを被った骸骨がいた。・・・あれが死神?だろうか。
・・・怖い、けど、悲しい気持ちになる。それに、懐か、し・・・い?


「う、あ!」


頭がズキンと痛み、映像がジリジリと荒れ、地面が揺れだす。
また違う場所に変わっていて、そこにはさっきまで屍の上にいた死神と、あの男の人が向かい合っていた。


「何故だ、何故お前がここにいる、………?」

「・・・俺はお前が嫌いだ。でも、怨んではいない。彼女はいつだって、お前を想っていたから」

「・・・ならば、私に力を貸せ。彼女の魂を必ず見つけ出すと約束する」

「・・・すまない。俺は、長には逆らえない。それに、彼女はもういないんだ、死神」

「・・・貴様までそのようなことを言うか、」

「もう止めろ。これ以上彼女を悲しませるようなことはするな。それは、お前が一番わかっているんじゃないのか?」

「・・・笑止。彼女は悲しんでなどいない。彼女はずっと待っている、私を」

「・・・目を覚ませ。イブは、死んだんだ。・・・フェアローレン」






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