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煙が舞い上がるフィールド。
誰もが息を呑んで、緊張した面持ちでフィールド内を見た。
次第に煙が消え、フィールドに立っていたのは、アヤナミ。
そして、
「いたた、けほっ、土埃で服汚れた」
無傷のナコが尻もちついて座っていた。
「さっすがナコたんだね」
「でも、これじゃ決着が・・・」
コナツが言うと、それに答えるかのようにアヤナミはナコに近づいた。
「ナコ、お前のザイフォンで、私にかすり傷一つでもつけられたら、お前の勝ちだ。やれ」
「何言って・・・」
「これではいつまで経っても勝敗が決まらぬ」
「だからって!」
「お前はどうしてザイフォンを放つのを躊躇っている?」
「っ!!」
クロユリが首を傾げながら呟いた。
「どういうこと?ナコは、今までザイフォンを出せなかったんじゃなくて、出さなかったの?」
「・・・ナコたんは、あの時防御壁を使った。でも俺の言葉は聞こえなかったみたいだから、ナコたんは故意に防御壁を使っていたって事になる。今までだって、結構防御壁使ってたしね」
「つまりは何だっていうんですか、ヒュウガ少佐?」
「つまりはね、ナコたんは、攻撃してザイフォンを相殺しようとはしなかったってことだよ」
「それって・・・つまり、ナコさんは守ることには使っているけど、攻撃するためのザイフォンは一切使っていないと?でも、何故そんなことを?別に攻撃してはいけないルールなどありませんし、ナコさんはもう、ザイフォンで攻撃したことが・・・」
「それだよコナツ!
ナコたんは、一度ザイフォンで攻撃したことがある。一度経験しているんだ。人を傷つけるということを。しかも、人を殺す指導も受けていない一般庶民の少女がね」
「じゃあ・・・ナコは、」
クロユリの言葉を遮って、生徒達の悲鳴があがった。
天井にぶら下がっている照明が、落ちてきていた。それも、天井の高さは高いため、照明は物凄い勢いをつけて落下している。
ちょうど落下する場所は、運悪く、ナコとアヤナミのいる場所。
だが、このフィールドには強いバリアが張ってある。衝突は免れると誰もが安心していたが、先程のアヤナミのザイフォンを喰らっていたバリアは脆くなっており、それにスピードをつけた照明が落ちてくれば、バリアはあっという間に壊れてしまった。
「アヤナミ様!!」
「ナコさん!!」
ブラックホーク全員が二人を緊張した面持ちで見守る。我等が主、アヤナミならきっと大丈夫だと信じながら、
「・・・施設の安全管理はどうなっている」
アヤナミは、照明が物凄い勢いで自分の方に落ちてきているにも関わらず、冷静に手を照明に向けた。
ザイフォンを放とうとした途端、それより早く、横から黒いザイフォンが照明に向けて放たれた。
照明は見事それに当たって、粉々に砕け散り、跡形もなく消えてしまった。
アヤナミはそのザイフォンの根源に目を向けると、そこには、見た事もないくらい冷たい目をしたナコが手を上に向けていた。
「ナコ・・・?」
「・・・・・・」
ナコは冷たい目をしたまま動かない。
アヤナミが異変に気付いてナコの肩を掴んで揺さぶると、ナコはすぐに目を覚ましたようにアヤナミを見つめた。
「あ、アヤナミさん?」
「ナコ・・・」
「わ、た・・・」
「っ!」
そのまま、アヤナミに倒れこむように眠った。
-----キリトリ-----
夢主のザイフォンは気持ちによって色が変わります(笑)
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