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「ぎぃゃああああああああああ!!」
「いやあああああああああ!!」
「ちょ、待ってって!!!」
「危っ、危なっ!」
「ストップ!!」
「アヤナミさっ」
疲れた。もう嫌だ。痛いよ。足が。息が苦しい。走っても走っても、追いついてくる。しかもあっちは息切れしてないどころか、余裕の表情。ザイフォンを使って体力消耗を半減させているからまだいいけど、私は運動が得意な方じゃない。かといって苦手、でもないとは思うけど。
「逃げてばかりでは何も変わらぬぞ」
私目掛けて飛んできたアヤナミさんのザイフォンをかわす(さっきからほんとに容赦ない)。
確かにアヤナミさんの言うとおりだ。私は試合が始まってから、ずっとアヤナミさんのザイフォンをかわしているだけ。避けているだけ。たまにザイフォンで防御することはあっても、ザイフォンで攻撃はしていない。
「さすがはアヤナミ様ですね」
フィールド外で、ナコとアヤナミの戦いを傍観するヒュウガやクロユリ、ハルセ、カツラギのもとに、コナツは近づいた。
「お疲れーコナツ」
クロユリはコナツにハルセの作ったクッキーを渡して言った。
「ありがとうございます。皆さんはもう終わったんですね」
この場にいる全員が、既に生徒達との対戦を終わらせていた。
「まあ、生徒さん達はまだまだこれからですからね」
カツラギが苦笑して言う。
いくら練習でも、本気を出すのが相手に対しての礼儀。そうなると、圧倒的な力を持つ者は自然と楽勝で勝ってしまう。それが、実技能力の高い生徒だとしても。
「それに比べて、ナコさんは凄いですね。アヤナミ様と戦っていながら、まだ続いているなんて」
ハルセは温かい目で戦いを見守っていた。
「それもさ、ナコたんったらさっきから逃げてしかいないんだよね。あのアヤたん相手に。それなのにここまでもつって、かなり凄いことだよ」
ヒュウガはサングラスで隠れた目を輝かせながら、楽しそうに笑っていた。
「とりあえず、ナコさんがなるべく大怪我しないといいんですが・・・」
コナツはただナコの身を案じていた。
激しさを増す戦闘。赤黒いザイフォンが飛び交い、鮮やかでカラフルなザイフォンが弾けていく。
ギャラリーは次第に増え、いまはもう全員がそのフィールドに釘付けになっていた。
「ナコ、防御ばかりではなく、攻撃しろ」
「それが・・・出来たらっ、とっくにして、ますっ!!」
徐々にスピードが上がってくるアヤナミ。徐々にスピードが下がってくるナコ。
「ナコ、次で終わらせるぞ。できるだけ手加減するが、恨むな」
「へ?嘘っ!?う、わ・・・」
アヤナミが大きくて禍々しいザイフォンの球体を作り出す。
それは今まで見た事ないザイフォンの大きさ。
(アヤナミさんって、本当はこんなに凄いザイフォン使いだったんだ・・・)
「ナコたん、早く防御壁作って!!」
「え?」
ぼーとアヤナミさんのザイフォンを眺めていたら、外野にいたヒュウガ少佐の声が聞こえた。
けど、私にはヒュウガ少佐の声は聞こえなかった。
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