TWIN | ナノ
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私はアヤナミさんと、ミロク理事長のいる部屋の前に立っていた。

アヤナミさんはノックをする直前、お前は余計なことは話さなくていい、と静かな声で私に耳打ちしてきた。耳に低音が響いて、息がかかるのを感じる。背筋がぞわりとして顔に熱が集まってくる。真面目な場面だというのに、私の意に反して身体は言うことを聞いてくれず。冷静に冷静にと下を向いて頬を手で包んで熱を冷ます。アヤナミさんからの視線を感じるが無視しよう。顔上げられないんだ。許してください。というかアヤナミさんのせいじゃね?無駄な美声だなちくしょー。

とりあえず、話すつもりは無かったが、話さなくていいと言われたことで迷いが無くなって、少し緊張が解けた。そう楽観的に考えながら、アヤナミさんがノックするのを見ていた。
中から老人のような声が、入りたまえと、言ったのが聞こえた。


「失礼します」

「し、失礼します・・・」


堂々と言ったアヤナミさんの後ろを消えそうなか細い声で言ってついて行った。
中央の奥に、椅子に座る老人がいる。どうやらこの人がミロク理事長らしい。


「先日はご苦労だった、アヤナミ君」

「ご用件だけをお伺いします」

「まあそう急かさずとも、」


ミロク理事長は苦笑を漏らし、机に肘をつけ、顔の前で手を組むと、真剣な表情になった。


「・・・その事件で、解決する力となった凄腕の兵がいるとか、」


はい、私です。なんて、口になんか出せるはずもなく、心の中で思う。


「・・・そのような者の噂は聞いております。ですが、誰と指定することは、」

「アヤナミ君、知らないフリ等は全部無しにしてくれ。私はもう彼女を呼んだ時点でわかっているよ」


ミロク理事長はアヤナミさんの出方を伺うようにじっと見る。対してアヤナミさんもミロク理事長のことをじっと見る。睨み合う二人。
まさか、この二人はデキ、二人でこっち見たああああ!!こっち見ないで!え、今の聞こえてたの!?読心術!?怖いよお母さん!軍は怖いよ!


「なかなか面白い子だね」

「・・・ミロク様の前でだらしない顔をするな」

「だっ!・・・すみません」


無言でアヤナミさんに睨まれたので素直に謝っておいた。だがだらしない顔って酷すぎるよ。ただのにやにや顔じゃないか。


「ふむ。君たちを見ていると、とても仲が良さそうだね」


えええええええええええええええええ。
私がぽかんとしている間も、ミロク理事長は続ける。


「アヤナミ君が彼女を大事に想うのもわかるが、ここはどうだろう、私にその子を預けてはみないか?」

「・・・それはつまり、士官学校に通わせたいということですか?」

「ああ。訓練させればその子はきっと誰よりも強くなる。この軍の中でもこれほど将来が楽しみな子はそういないよ。そして君の為にもなる」

「・・・とおっしゃいますと?」

「君のベグライターにしてはどうかということだよ」

「・・・・・・」


やっと現実に帰ってきた私は、頭が混乱していた。士官学校?ベグライター??コナツさんとか、ハルセさんみたいな??しかも、アヤナミさんの!?


「悪い話ではないはずだ。彼女もそれだけの力があれば、少なからず危険な目に遭う事もあるだろう。大きな力は良くも悪くもなる。もし力の暴走が起きれば・・・君が一番わかっているのではないかね、アヤナミ君」

「・・・・・・わかりました。その話、お受けします。ですが、条件があります」

「・・・言ってみたまえ」

「ザイフォンの訓練だけは、私が責任を持ってさせます」

「・・・つまり、実技は君が教えると?」

「はい」


また流れる沈黙。ミロク理事長は組んだ手を眉間に当てて悩んでいるような素振りを見せている。


「・・・わかった。条件を飲もう」

「ありがとうございます」

「そうだ、彼女にも一応承諾を得なければね」


にこっと笑いかけてくるミロク理事長。優しげなおじいちゃん、という印象。それは失礼すぎて口には出せないけれど。


「君の為にも、ベグライターになる訓練を受けてくれるかね?」

「・・・は、はい!」

「ありがとう」


優しくそう言ったミロク理事長は、茶封筒を私に差し出した。


「一応、陸軍士官学校に入学ということで、必要な書類を入れてある。部署に帰ったら確認しなさい」

「はい」


私は書類の入った茶封筒を抱え、アヤナミさんと一緒に、ミロク理事長の部屋を去った。







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過保護なアヤたん



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