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私とヒュウガ少佐とコナツさんが食べ終わった後、クロユリ中佐とハルセさんはデザートを食べていた。
「ナコ、食べたいの?」
私の熱い視線に気付いたのだろう。クロユリ中佐が首を傾げる。
「い、いえ!お気になさらず。それよりクロユリ中佐、そのデザートの上にかけられている青い液体は・・・」
「青空ソースだよ。食べてみる?」
「いや、遠慮しておきます」
クロユリ中佐は絶対味覚音痴に違いない。青いのはヤバいよ。あと蛍光色とかは。
「私ので良ければ、どうぞ」
そう言ってハルセさんはスプーンにデザートを少しのせ私の方に差し出してくれた。私はいただきます、と言ってぱくりと口に入れる。
「美味しいです」
ハルセさんはそれは良かった、とにこりと微笑んだ。
「俺もナコたんにあーん、したいな☆」
「気持ち悪いですよ少佐」
頬杖をつきながらにこりと笑ったヒュウガ少佐に向かって、コナツさんは呆れた顔で言った。危うくヒュウガ少佐の色気に惚れそうになった。騙されては駄目だ、気を確かに持つんだ私!
「えー、だってあーんは彼女にしてもらいたい憧れのシチュエーションベスト5に入るくらい王道なんだよ。コナツだってやりたいくせにー」
「別に思ってませんよ!ヒュウガ少佐じゃあるまいし」
ヒュウガ少佐とコナツさんが言い争ってる中、私はハルセさんからのあーん、を満喫していた。
「ハルセ、貸して」
途中、クロユリ中佐がハルセさんからデザートのかけらがのったスプーンを借り、そのまま私に食べさせてくれた。
「ありがとうございます、クロユリ中佐」
もぐもぐと食べながらクロユリ中佐が自分の(青空ソースのかかった)デザートを完食していて良かったと安堵した。
またあーん、と言われたので口を開けてスプーンにかぶりつくと、真正面にさっきより近くなったヒュウガ少佐が、ニコニコとクロユリ中佐が持っていたはずのスプーンを握っていた。
「おいしい?」
「おいしいですよ?」
にこにこと笑顔で(先程からずっと笑顔だが)スプーンを握りながら聞いてきた。
そんなにやりたかったのだろうか。さっきコナツさんにめちゃくちゃ語ってたもんなあ。
私より乙女じゃね?ヒュウガ少佐。
もぐもぐと少なくなったデザートを見たあと、コナツさんがこちらを見ていたことに気付いた。
「・・・コナツさん、」
「え!?いや、別に僕は羨ましいとかそういうんじゃなくてですね・・・」
ちょっと顔を赤くしたコナツさん。
可愛いすぎる。どちらかと言えば私があーんしてあげたいんだが。
ヒュウガ少佐がやっぱりコナツもやりたかったんだーと茶化すと、何処からか取り出した釘バットでコナツさんがヒュウガ少佐を黙らせた。
戻ってきたコナツさんは、じゃあ、とスプーンを私の前に差し出した。
き、緊張する。
なぜだかわからないけれど、今まで三人にもあーんしてもらっときながら、コナツさんにしてもらうとなると急に恥ずかしくなる。
きっと、目の前のコナツさんが恥ずかしそうにしているからだろう。
「ごちそうさま、です」
「いえ、」
ぎこちない会話。
いたたまれなくて下を向いてもぐもぐした。
「最後の一口は誰がやるー?」
呑気に残り最後のあーんは誰だ、とはしゃぐヒュウガ少佐。
もう自分で食べたい。そりゃ皆にしてもらうのは嬉しいし女の子の夢だから嫌ではないけど。だってイケメンが揃いに揃ってあーんしてくれるんだよ!?うん、夢だ。
「私がやろう」
低い声がヒュウガ少佐の方から聞こえた。ヒュウガ少佐の声ではない。これは、
「アヤナミ様!」
クロユリ中佐が嬉しそうな声をあげた。
「来たかったんなら初めから言えば良かったのにー。恥ずかしくて言えなかったの?アヤたん」
「・・・・・・」
「しょ、少佐!アヤナミ様を怒らせるようなことをわざわざ言わないで下さい!アヤナミ様もここは公共の場ですのでどうか穏便に!」
ちらりと見せた鞭が一瞬戸惑い、しまわれた。コナツの必死の弁解で何とかアヤナミさんの機嫌を落ち着かせることが出来たみたいだ。
きっと帰ったらヒュウガ少佐は一回お花畑に行ってくるのだろう。
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