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「ただいまー」
林檎飴を嘗めながらヒュウガ少佐は戻ってきた。
「ヒュウガ少佐!何処に行ってたんですか!?少しは見習ってくださいナコさんを!」
「何なに〜?・・・なんでナコたんが仕事してるの?」
「ヒュウガ少佐がいなくなったあと、率先して手伝ってくれたんですよ!」
「ふーん・・・」
ヒュウガ少佐が私の近くまで来て覗いてきた。私はお構い無しにだん、だん、と続ける。
「ナコたんこういうの得意なの?」
「いいえ、どちらかというと苦手なうえ嫌いです」
え、と驚嘆の声をあげたヒュウガ少佐。
「じゃあなんで手伝ったの?」
「なんでって・・・あんな大量の書類をコナツさん一人にやらせるなんて正気ですか!?かわいくて真面目でかわいくて優しくてかわいくてしっかりしてるコナツさんを可哀相だと思わないんですか!」
ヒュウガ少佐は笑い出し、コナツは少し顔を赤くして照れていた。
「笑い事じゃないです!ほら、ヒュウガ少佐、仕事してくださいね?」
「えーそんな可愛く言われても」
「ヒュウガ少佐は見た目はカッコイイんですから中身をちゃんとしてください。女の子は見た目だけじゃ惚れませんよ。仕事が出来る男はモテるんですから」
ピタリと止まったヒュウガ少佐。
「それ、本当?」
「本当ですよ、だから仕事しましょ「ナコたんも惚れちゃう?」う・・・え?」
「だから、俺が仕事したらナコたんも俺に惚れちゃうってこと?」
これは、なんと答えたらいいのだろう。ヒュウガ少佐に仕事をさせるためこんな話を持ち出したが・・・。とりあえずヒュウガ少佐の後ろにいるコナツさんが手を合わせてお願いしてきたのでのっておくか。
「・・・もちろん、仕事をしたなら可能性は」
途端いきなり仕事に取り組み始めたヒュウガ少佐。
「ヒュウガ少佐が仕事を・・・ありがとうございますナコさん!!」
コナツさんからは泣きながら握手され(ヒュウガ少佐はそんなに仕事をしない人なのか)、あとは大丈夫ですから、と休むよう促された。
やる事がなくなった私は仕方なくアヤナミさんの隣に行った。なんとなく。いや坂田似のカッコイイ顔が見れるってそんなわけ・・・あったり。
「いいのか?」
「何がですか?」
ヒュウガ少佐を見ていたらアヤナミさんに尋ねられた。
「ヒュウガは本気だ」
ヒュウガ少佐が仕事をしたら惚れる、って話に頷いたことを言っているのだろう。
私は小声でアヤナミさんだけに聞こえるように、
「仕事が出来る男って言っても、私が言ったのはアヤナミさんくらい仕事するような人、ですから。まあ仕事ばかりも逆に心配になるし嫌ですが・・・」
「・・・では、お前は既に私に惚れているということか?」
私はいきなりのことに驚き、目を開いたがすぐに平常心を取り戻した。
「・・・惚れてますが嫌いです」
「・・・どっちだ」
眉間にしわを寄せ明らかに不機嫌になった。
「正直に言えば鞭怖いし目冷たいしオーラ黒いし殺されそうだし、それが無かったなら誰だって惚れますよ」
「・・・」
またなんだか黒いオーラを纏いだしたアヤナミさん。死亡フラグだ。
「あ、でも私の愛する坂田は仕事しないちゃらんぽらんだ。」
「何故そんなやつを愛せる」
「それは、」
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