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「アーヤたん☆昨日ナコたんとヤっちゃった?」
私が否定する前に、バシッと鞭のしなる音が執務室に響いた。
「何も鞭で打たなくてもいいじゃん!」
「無駄口を叩く暇があるのなら仕事をしろ、ヒュウガ」
「ナコた〜ん、アヤたんが虐める〜」
泣き真似しながら抱き着いてきたヒュウガ少佐。ヒュウガ少佐とアヤナミ様っていつもこんな感じなんだろうか。
下ネタ発言はアヤナミさんがお仕置きしたということで許してあげた。鞭の痛さは共感できるのでよしよしと頭を撫でると更にきつく締めてきた。
「ナコたん優しい〜」
ほのぼのしてるとアヤナミ様にそんな奴に構わなくていい、と言われた。
隣で書類と戦っていたコナツにも、甘やかすと付け上がるからほっといた方がいいですよ、と言われた。
でもイケメンに抱き着かれて嫌がるなんてできようか、いや出来まい。
「ナコたん柔らかくて気持ち良いね☆」
「どこ触ってんだグラサンんんんんんん!!」
バキッ、とグーで顔面を殴った後で、後悔。
軍の少佐に手え出したああああ、どうしよう死んじゃう殺される。
「大丈夫ですか!?全く少佐はなんて失礼な・・・すみません」
コナツさんは優しく心配してくれて代わりに謝ってまでくれた。
少佐の心配はしなくていいのかと思うが。
というか他の人たちも普通に気にしていない様子。
一応、警戒すべきところなのでは?
「サングラス割れちゃったー、ナコたんって意外と力あるねー」
新しいサングラスをどこからか取り出して平然と起き上がった少佐。
・・・え、かすり傷すらついてないのは私が弱すぎるせいだけ?それとも、
「ヒュウガ少佐って不死身なんですか?」
「そんなことないよー」
ヘラヘラと笑う少佐。多分不死身で間違いない。
「ほら、遊んでないで仕事してください!」
「頑張ってコナツ☆」
あっという間に消えたヒュウガ少佐。
何処に消えたんだろうと私がキョロキョロしていると、コナツさんが逃げられた、と頭を抱えていた。 逃げ足早っ。
「私、なんか手伝いましょうか?」
「大丈夫ですよ、いつものことですから」
机には山積みされている書類たち。
これが・・・いつも?
「ストライキ起こしても何も言われないと思う」
書類を一枚手に取って見てみた。・・・ヒュウガ少佐が逃げたくなるのもわかる気がする。
それよりこれ何語ですか、
「これ、今日中に終わらせられるんですか?」
今日中に終わらなかったら、明日も今日と同じくらいの書類がきて、もっと大変なことになるはず。
「・・・終わらせます」
苦しそうにまるで決死の覚悟を持ったような言い方のコナツさん。なんて不敏な。
「やっぱり私手伝います!やり方教えてください!出来れば読んだり書いたりしなくていいような仕事で!」
「いや、でも・・・」
「何もせずにお世話になるなんて失礼だし、何より暇なんです」
うーん、と困った顔をするコナツさん。
「じゃあ、アヤナミ様がいいとおっしゃったら・・・」
「アヤナミさん!私にコナツさんを手伝う許可をください!いいですよね!いいに決まってますよね!コナツさーんアヤナミさんいいっ「勝手に進めるな」・・・駄目なんですか、」
一瞬考えたアヤナミさんだったが、直ぐに、
「いいだろう」
と承諾してくれた。
良かった、手伝うのを駄目なんて言う人いるはずがない。
「はい、許可取りましたよ」
「仕方ないですね、じゃあ早速やってもらいましょうか」
コナツさんにわかりやすく教えて貰って、書類を渡され、やり始める。
とはいえ、印鑑を押すだけという簡単な作業だ。
ひたすらだん、だん、と物凄いスピードで開始した。
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