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「私、ここに来てからいつも疑問に思うんです」
「どうして私はこの世界に来たんだろうって」
「きっと何かしら目的があってとばされたはずなんです、、多分」
「アヤナミさんはどう思いますか?」
「私が、ここにきた理由」
目的・・・か。
リビドザイルの奥中央に設置された前方が一望見渡せる椅子に座りながら
今となっては懐かしさを感じる、ナコがまだ来て間もない頃を思い出す。あの言葉は今の伏線だったのか、それが真実かどうかは確かめようが無い。だがもうすぐでその答えもわかるだろう。
今頃彼女はどうしているのか。教会にいる司教たちから自分のことを聞いているだろうか、アダムに覚醒した時点で気付いているだろうか。
次に会ったとき彼女はどんな顔をして私を見るのだろう。
私はどんな顔をして彼女に会いにいけばいい?
次々と湧き上がる疑問と不安にらしくないなと思う。
このようなことを思ったことも悩んだことも初めてだった。
ヒュウガにはもしアダムの転生としてナコが私を殺そうとするなら、私も容赦はしないと答えたが、彼女を前にした時、本当に彼女を殺せるだろうか。
殺したくない、そう心の底では思っている自分がいる。
手ぬるい考えなどとうの昔に捨てたというのに。
「アヤナミさん!」
ナコの声が聞こえたような気がして部下たちの方を見る。
いつも座る場所に彼女の面影を見た。それはすぐに消え、いつもより静かな空間に違和感を感じた。
「ナコ、ちゃんと生きてるかなあ」
「大丈夫ですよ、クロユリ様。ナコさんはとてもお強い女性ですから」
「ハルセくんの言うとおり、私たちが暗くしていてはナコさんを迎えに行った時悲しませてしまいますよ」
「今までナコさんには助けられてばかりでした。今度は私たちの番ですよね、!」
「そうだね、コナツ。俺ら、ナコたんには色んなものもらってたもんねえ。だから、必ずナコたんを奪還してまた旅行にでも行こうか」
「それはいい考えですね、ヒュウガ少佐」
「ヒュウガもたまにはいいこと言うんだね」
「クロたんってば厳しいなあ」
「なんだか楽しみになってきましたね」
「旅行に行くなんて言ったらナコさん、喜ぶでしょうね」
「・・・だから、絶対みんなで帰ろうか。ね?アヤたん」
どうやら私はいらぬ心配をしていたらしい。
彼女がアダムの転生であるなしなどどうでもよい。ナコはナコだ。馬鹿で、単純で、私の愛する女だ。
「・・・ああ、もちろんだ」
さあ、迎えにいこうか、愛する私の部下を。
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