TWIN | ナノ
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※若干R指定らしき内容を含みます。閲覧背後注意。自己責任でお願いします。







「え・・・」


手首を掴まれた。冷たい手。ひんやりとした気持ちのいい感覚に、私は思い出す。


「何をしている?」

「アヤナミ・・・さん?」


ぞっとした。いつもと違う雰囲気を出すこの人に。後ろに立たれ、両手首を掴まれ、見下ろされてる。怖い。ただそれだけだった。

ぐいっと身体が引っ張られ、視界が反転する。何故かお姫様抱っこをされ、アヤナミさんはさっきまで踊っていた彼を一瞥すると、私を抱えたままダンスホールを出た。











人がいない静かなバルコニーで私は降ろされた。アヤナミさんのあの刺々しい視線や雰囲気は変わらない。私は先ほどから一度もアヤナミさんを見ることが出来ずにいた。


「あの男はなんだ?」


低い声。いつもの不機嫌なときよりそれは酷い。


「あの人は、最後のケーキを譲ってくれた人で、それで、流されて踊ることになって・・・」

「今日初めて知り合ったのか?」

「当たり前です!私、男の人の知り合いなんていませんしっ」


思わずむきになって強く言葉が出てしまった。少しそれを後悔したが、次のアヤナミさんの言葉で、そう思ったことを後悔した。


「本当か?なら何故あの男はお前をあのような厭らしい目で見ていた?」

「そんなの知りませんっ」

「確かに今日のお前はいつもとは違い綺麗だが、たった一日であそこまで馴れ馴れしくなれるものか?」

「アヤナミ、さん?」


思わず綺麗と言われたことに顔が赤くなる。


「お前はいつもそうだ。私の目の届かぬところで危険にあって、何故私の傍にいないっ」


近づくアヤナミさんから離れようと後ずさりして、背中が壁にぶつかる。苛々したような声色で言い終わると同時にアヤナミさんは手を壁についた。
逃げ出せないようにとつくられたこの体勢。いつもの私なら恥ずかしさとか萌えとかできゃあきゃあ騒いでいるだろう。でも今は違う。アヤナミさんが、怖い。今すぐにここから逃げ出して一人になりたかった。


「おしおきが必要だな」


耳元で囁かれ、背筋がゾッとする。


「アヤナミさっ、・・ひぁっ」


ぺろりと耳朶を舐められ、変な声を出してしまった。咄嗟に口を押さえると、アヤナミさんに手を取られ壁に押し付けられる。ぴちゃぴちゃと水音が耳の中に鼓膜する。ねっとりと丁寧に舌で耳を犯され続け、私の頭は真っ白になっていた。がくがくと震える足は支えているのがやっとで、どうすればこの状況を抜け出せられるのか、それだけを考えた。でもアヤナミさんの熱を持った吐息が直接耳に入ってきて、考えることが出来なくなる。耳を弄っていた舌は、徐々に下がっていき、首元を辿っていた。まるで吸血鬼のような舐め方が本当に血を吸われてしまうのではないかと思わせた。


「はぁ・・・アヤ、ナミ・・さん、もうっやめ・・・て、」


抵抗しようにも両手をアヤナミさんに押さえつけられているため押し返すことさえ叶わない。アヤナミさんがただ正気に戻ってくれることを祈るしかなかった。


「いたっ」


ちゅっ、とリップ音が響き、一瞬の痛みが走る。キスマークを、された?
なんで、どうしてと色々ごっちゃになった感情が渦巻いて、自然と涙が零れた。涙は私の頬を濡らし、アヤナミさんの頬に落ちた。それに気付いたアヤナミさんがゆっくりと離れていく。

涙で歪んだ視界は、アヤナミさんの悲しそうな表情を映していた。









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