翌朝、私は一つ年をとった。大広間に行くと友達が様々なプレゼントをくれた。香水、アクセサリー、ぬいぐるみ、文具…。梟便では両親からも届いた。が、一通だけ混ざっていた送り主の書いていない手紙。誰だろうかと手紙を読むとそこには「少しだけ大人になったあなたをもらいにいきます。」と。意味が分からなかったので私は深く考えずポケットにしまった。


放課後、図書館で一人本を読んでいたらいつの間にか辺りが暗くなっていた。晩ご飯を食べるために急いで大広間に向かう。廊下をすぐに曲がったところで誰かに腕を掴まれた。見るとそこにいたのは、

「リーマスくん…。」

リーマスくんはぐい、と腕を引っ張ると中庭まで連れ出した。真っ暗な中庭には人一人いない。


「なによ。」

私は口をひらいた。まるでこれでは誘拐である。

「Happy birthday.」

「…は?」

「なんだ、僕から言われるのは嫌なの?」


口元が緩みきっている彼は唐突に告げた。私の頭は会話についていけない。

「僕が、first nameの誕生日を、祝っているんだ。」

ゆっくり、ゆっくり言い聞かせるように笑顔で言われる。腕を掴んでいた手が離れ、優しく抱き寄せられた。

「何…やってんの…だって、だってリーマスくんはリリーと…こんな不細工な私なんかじゃ…。」

「好きだよ、first name。好きだ。」

腕に入る力。近付く心臓の距離。

「君は本当に馬鹿だね。」

夢だと思った。リーマスくんがこんなことを言うなんて私は夢から覚めたくないとも思った。


「だって、リーマスくんは昨日リリーと…。」

「あれは相談にのってもらっていたんだ。」

この色、好きなんだろう?と手渡されたのは綺麗な石のネックレスだった。細工がされていて、見たこともないくらい輝いていた。入っている箱もお洒落で、なんでここまでこだわっているのだろうかと思った私は彼を見る。


「リリーを好きなんじゃないの?」

「本物の馬鹿は言葉も通じないのか…。」

「でも私に嫌みを言うし…。」

「可愛い子ほどいじめたいよね。」

「私可愛くないし…。」

「僕が好きだと言ってるだろう。」

「リーマスくん人気者だし。」

「あんな香水臭くて煩いのは女とは言わないよ。」

何分か言い合って、私は夢じゃないのだと悟った。

「素直じゃないのね。」

君に言われたくない、と拗ねる彼の顔が可愛くて私は頬に軽いキスを送った。

「僕のことだいっ嫌いじゃなかったの?」

「うるさい。」

「…素直じゃないfirst nameはもう僕のだから。」


他の男に移るなんて言わせないよ


二度目の溶けそうに甘いキスを堪能しながら、リリーにどうやって謝ろうなんて考えていた。


HAPPY BIRTHDAY TO YOU



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