「グリフィンドール!」

組み分け帽子の大きな声が響き渡って、ミネルバは思わず安堵の溜息をついた。良かったわね、と小さく耳打ちすると、素敵な笑顔が返ってくる。ジェームズにそっくりな彼の顔。よく悪戯で体に物を投げつけられたことを思い出し、少し不愉快な気持ちになる(ゴーストの生態を調べるためだと言われて付き纏われたりもした)。きょろきょろと辺りを不安げな表情で探るように席に着いた彼は、お父さんとお母さんに似ることなく、実は臆病な少年なのかもしれない。眼鏡をかけた小さな彼は、この大広間の中でも特別存在感を放っていた。

この学年は特殊だ。赤毛一家のウィーズリーもいるし、マルフォイ家の一人息子も入学した。それに、ハリー・ポッター。生き残った男の子。グリフィンドールは彼を獲得出来て大変喜んでいるのが雰囲気から分かる。それに隣の彼女からも。

「ミネルバ、にやけすぎよ。」

「あなたも食事中に周りを飛び回るのはやめなさい。行儀が悪いわ。」

サー・ニコラスだって飛び回ってるのに。ぶつぶつ言いながら大広間の端をすっと通り抜けようとすると、真横のスリザリンの生徒たちから視線を感じる。先輩方から私がマグルだということを聞いたであろう一年生たちは、口々にコソコソ話をし始めた。一人だけ、じっと見つめるのはプラチナブロンドの彼。

「お前、父上の言っていたfamily nameだな。ホグワーツで死んだ馬鹿なマグルだ。」

あら、と微笑みを返せば彼はむっと顔をしかめた。こういうことを言われるのは生憎慣れっこだ。それに、彼の父親も全く同じことを私に言っていた。

「あなたのお父さんがホームシックになる度に泣いていたのをいつも慰めていたのが私だって教わらなかった?」

耳元で、小さな声で囁くと驚いたのは彼の方で。勿論嘘なので、物を投げられる前にすっとミネルバの脇に戻ると、騒ぎを起こしたくないのか彼は大声をあげることなく大人しくしていた。大広間から出るのをやめた私は、教員の足の隙間をぬってセブルスのところまで移動する。

「ルシウスの息子はやっぱりスリザリンね。」

「大人しくしないと校長がお叱りになりますぞ。」

「ご忠告どうも。」

セブルスは相変わらずだ。むすっとして、表情を変えず、なにを考えているか分からない。ルシウスの子はセブルスにとってそう大事なことではないのか、目線はハリーに向けられている。ジェームズに似ている顔が、そんなに憎いのだろうか。

「こっ…今年も…よろしく、お願いいたしますね…。」

セブルスの視線に目を向けていた私の頭上から、不意にクィレル先生の声がした。どもったその口調は特徴があるからすぐに分かる。

「よろしく、クィレル先生。」

なにか言いたげな顔をしていたが、私はもう新入生歓迎会に飽きてきていたので大広間を後にすることにした。ではまたね、と声をかけて、隅を移動する。途中、またマルフォイ君と目があったが、彼は睨み付けるばかりでなにも口にすることはなかった。

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20130814



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