「あなた信じられる?ハリーが最低なマグルに引き取られたのよ!たまにあのマグルの元に行って様子を見なくちゃ!」 「なんて騒いでたのがつい昨日のようね、ミネルバ。」 「全く煩いわよ。」 明日からまたホグワーツは賑やかになるという夜。特に許可を得ることなくミネルバの私室に入ってきたせいで彼女の機嫌を損ねてしまったらしい。そんなこと珍しくないのに。明日、あの「生き残った男の子」が入学してくるのだ。気が立っているのだろう。 「それにしても、ルビウスにハリーを頼むなんて、ダンブルドアはなにを考えているのかしら。」 クスクスと笑うと、ミネルバにギロリと睨まれた。思わずはっとして、そんな怖い顔をしないでと頼む。 「全く…first nameといるからプライベートが皆無な気がするわ。」 「そんな生活も嫌いじゃないくせに。」 もうホグワーツでの生活を続けて何年になるのだろう。彼女は立派な大人で、私はまだ制服を着ている。 「あなたは若くていいわね…。」 「あら、そんなこと言われるなんて死んでみるのも意外に悪くないわね。」 減らず口、と悪態をつかれる。 それにしてもリリーとジェームズの子が入学してくるなんて、案外長生きしてみるものだ(もう死んでいるけれど)。彼らが一年生の頃より前から私はここで教師として働いている。制服を着た教師。魔法のことは半人前だから教えられないけれど、マグル学ならと校長が推薦してくれた。同時期にミネルバも変身術の教師になり、それからずっとこの関係だ。教師としてまだまだだと思っていたのに、いつの間にかベテランの枠に入ってしまった。 「グリフィンドールに入るかしら、彼。」 「そんなの知らないわよ。」 棘のある言い方。それでも期待が滲んでいるのを私は聞き逃さなかった。リリーとジェームズの子、一体どんな秀才がこの学校に入ってくるのだろうか。きっとお転婆だろう。腕白で、悪戯好きかもしれない。 「セブルスがまた手を焼くかもね。」 「あなた楽しんでるでしょう…。」 ふふ、と笑ってミネルバの部屋を後にした。ポッター夫妻が亡くなったときのミネルバは見れたものじゃなかったが、トラ猫の姿でたまにマグル界に行っていたところを見ると、やはりハリーが可愛いんだろう。顔には出さないが酷い溺愛っぷりだ。 「明日は忙しくなりそうね。」 ふらふらと学校を徘徊しながら、小さく呟いた。 ---------- 20130727 |