中に入るとそこには沢山の本とテーブル、それにティーセットまであって私は胸が高鳴った。


「これ、セドリックさんの私室ですか…?」

「まさか!ここは必要の部屋って言って、この部屋を必要としている人の前に現れるんだよ。」


さ、座ってと促されて椅子に座る。紅茶を注ぐセドリックさんの手付きが慣れていて、つい見とれた。


「はい、どうぞ。」

渡された紅茶はフルーティな良い香りがして、口に含んだ瞬間優しい気持ちになれた。


「それで、どうして泣いていたんだい?」

言いたくなかったら無理に言う必要はないんだけどね、と付け加えてセドリックさんは紅茶を飲んだ。私は今まであったことを全てセドリックさんに言い、彼は頷きながら話を聞いてくれた。


「そうか…つらかったろう?」

テーブル越しに頭を撫でてくれるセドリックさん。あぁ、彼に恋していたらきっともっと幸せな片思いが出来ていたのかななんて考えてしまう。それくらいセドリックさんは優しくて、大人で、包容力があった。


どれくらいいただろう。ドラコのことを話してから、少し他愛もない話もして「そろそろ寮に帰ろうか」とセドリックさんが提案するまで会話をしていた。セドリックさんと話す度心が少しずつ軽くなり、帰るころには幾分気持ちが楽になった。


必要の部屋を出て、セドリックさんに別れと感謝を告げて寮の方へ歩く。やっぱりセドリックさんに相談して良かった、また明日から片思い頑張ろうと意気込めるくらいまで気持ちが軽くなっていたのだから。




first nameがやっぱり心配になって、放課後あいつの後をつけていた。なんだか僕が振り回されているような気がして癪だが、どうもあいつが泣いたと思うと放っておけなかった。

大人しく寮に戻る素振りのfirst nameを見て、流石に女子寮には入れないと後を追うのをやめようとしたときハッフルパフの先輩であるセドリックがfirst nameを呼び止めた。

2人は笑いあって、しばし会話をしたかと思うと手を引かれるようにどこかへ行ってしまった。バレないように必死に後をつけてたどり着いた先は「必要の部屋」。2人はそこに入って言ってしまい、もう後をつけることは出来なくなってしまった。


そこで気付く。もしかしたらセドリックとfirst nameは付き合っているのではないかと。僕が彼女が出来たことを言わなかったように、彼女もセドリックと付き合ったことを言わなかったのではないかと。


スリザリンの談話室で待っていると、夜遅くにfirst nameが帰ってきた。1人でいる僕と目が合うと一瞬驚いた顔をして、それから「遅くなったこと内緒にしてね」と言って女子寮に駆けて行こうとする。が、僕はfirst nameの手を引っ張り隣に座らせ出来る限り低い声を耳元で出した。


「セドリックと何やってたんだ?」

すると、顔を真っ赤にしたfirst nameが僕を睨み「ドラコには関係ないでしょ」と言った。


「関係ある、だって僕は――」

「関係ないの!ドラコだって彼女さんといちゃいちゃしてるじゃない!ほら、夜に談話室で女の子と話してたら可愛い彼女さんに勘違いされるわよ!もう話しかけないで!」

友達だなんて、もう終わりにしましょう!

そう叫んで、first nameは走って女子寮に入っていった。僕は呆然として、頭の中にはfirst nameが言った「もう終わりにしましょう」だけが響いていた。



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