あれから一日、僕はあろうことかfirst nameのことばかり考えていた。スネイプ先生のローブにすっぽり収まってしまっていたfirst name。顔を真っ赤にしていたfirst name。去り際に僕を子供扱いしたときのfirst name…はっきり言ってどれも鮮明に覚えているし、全てが頭をぐるぐる回って午後の授業はまるで頭に入ってこなかった。


「ねぇ、ドラコ。今日のあなた変よ?」

一体どうしたの、なんて僕の顔を覗き込んでくる彼女。確かに顔は綺麗だな、なんて考えて気付く。こいつは本当に僕のことが好きなのか…?


「なぁ、その鎖骨のところにある痣みたいなの何だ?」

「え、あ…これは…。」


彼女の手がその傷をすっぽり隠した。僕にはそれが何なのか分かっていたし、それを知ったところでどうとも思わなかった。まるで他人ごとのように話題を逸らす。


「今日も素敵だ。」


髪を一束とって唇を落とす。微かに頬を赤らめながら「あなたも素敵よ、ドラコ」だって。嘘も大概にして欲しいものだ。




悪いものを見てしまった私はとっさに近くにいた友達の後ろに隠れた。友達は最初頭にハテナを浮かべていたが、前を歩くドラコたちを見て気付いたようだ。もう少しで談話室…というところで、彼は彼女の髪に唇を落としたのだ。私はショックだった。あの、ハグリッドの小屋の前にドラコが来ていたというのは少なからず私に好意をもってくれているからだと思っていたし。それなのに、今のは完璧に“ラブラブな”2人のすることだった。それにドラコが手慣れているのにも驚いたし、彼女さんの腰に手をおいて――まるで私たちなんかいないみたいに談話室に入って行くのをみて複雑な気持ちになる。私は本当にドラコが好きだったのだ。ただ、伝える時期が遅過ぎた。

談話室を顔も上げずスタスタ通る。そのまま自室に直行し、布団に埋もれた。もうなにもしたくない、見たくない。

そう思わせるほど、ドラコと彼女さんはお似合いに見えた。




髪に唇を落としてふと後ろを見ればfirst nameが立っていた。最悪だ、見られた。

体を近付けてきた女の腰に手をおき、香水がぷんぷん匂う髪をもう一度嗅いだ。くさい。first nameのようなシャンプーの匂いではなく、ただ甘ったるいだけの匂いに飽き飽きしつつ談話室のソファーに座れば、first nameが横切るのが見えた。

僕はいつまでも頭から離れないfirst nameを恨みながら、内心自分の優柔不断さに苛立ちを覚えていた。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -