おかしい。魔法薬学だけは得意なくせに、first nameは魔法薬学の授業に出ていないのだ。スネイプ先生のお気に入りのくせに、なんで今日はいないんだ。大広間で朝ご飯を食べていたじゃないか。


「Ms.first nameは?」

唸るような低い声が教室に響く。誰も、何も言わなかった。スネイプ先生は「風邪でも引いたのかね。」と独り言のように呟いて授業を進めた。




涙が止まっても授業を受ける気にならなかった私は、みんなが授業を受けている間寮をこっそり抜け出してハグリットのところに来ていた。ハグリットとは仲がいいので、悩みを聞いてもらおうと思ったのだ。


「不在、かぁ…。」


生憎、ハグリットは不在らしく少し悲しくなる。大人しく寮に戻ろう、と思って後ろを向いたら予期せぬ人が立っていた。

「おはよう、Ms.first name。何故こんなところへ?」

不敵な笑みを貼り付けたスネイプ先生が、私の腕を掴んでいたのだ。

「あ、いや…その……。」

冷や汗が背中を伝う。

「我が輩の授業をサボっておいて理由もない、と?」

グイッと腕を引かれ、黒いローブの中にすっぽり収まる。意外と広いななんて呑気に考えているが、つまり、これは、その――――――――


「恋は、」


抱き締められていることに今更気付き顔を真っ赤にしている私をよそに、スネイプ先生は独り言のような声で話し始めた。

「素直になった者が勝つ。意地を張っててもつらいだけだぞ、Mr.マルフォイ。」

え、と思って辺りを見わたせばそこにいたのは間違いなくドラコなわけで。


「ちょ…あなた今天文学の授業中じゃ…!」

「うるさい。授業を受けていないお前に言われたくはない。」


ぎゃーぎゃー言い合う私たちを後目に「あまり事を荒立てんように」とだけ言ってスネイプ先生は去っていった。やっぱり少し不思議な人だ。


「で、なによ。」

「それは僕のセリフだ。」

なんでスネイプと抱き合っていた、なんて真顔で聞かれて一瞬隙をつかれた。ドラコはしてやったって顔をしていたけど、私はすぐにいつものペースで「あら、ドラコちゃんにはまだ早かったかしら?」と言えば、顔を真っ赤にしたドラコは私に背を向けて天文学の教室の方へ駆けていった。




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