その後は、会話をしていない期間を埋めるように小声で色々な話をした。場所が図書室なのだからあまり馬鹿笑いは出来ないが、それでも二人でまた会話出来ていることが私にとって満足だった。ドラコの隣に座って、ドラコの視界には私が中心になっている。それだけで、本当に満ち足りた気分になれたのだ。


「そろそろ寮に帰らなきゃな。」


どれくらい話しただろう。ドラコがスッと立ち上がって私は後に続いた。寮までの道はドラコが私の荷物を持ってくれてすごく紳士的だった。まるでいつもの彼ではないみたいに。そんな彼の様子だから、期待していたのだ。もしかしたら告白してくれるかもだなんて。




談話室に着くと、そこには元彼女がいて気まずくなる。あいつと別れたと言っても、悪いのは自分自身の身勝手な行動なわけで。first nameに自分が持っていた荷物を渡して最低限の挨拶の後、男子寮に逃げ込むように走った。




ドラコは談話室に着くとある人を見つけてそわそわし始めた。私はその視線の先にいる人が誰なのか分かっていたし、ドラコがそわそわする理由も分かっていた。ドラコの彼女さんだった人だ。沢山の女の子のほぼ中心に、綺麗な笑顔を咲かせている人こそドラコの好きだった人なのだ。

思えば、別れた理由も聞いていなかった。あんなに美人な人なのに…なんて考えていたら、ドラコは私の荷物を渡して逃げるように去ってしまった。ドラコがいなくなった談話室は気まずい雰囲気が漂っていた。それもそうだ、ドラコとの別れ話はもうスリザリン中に広まっているだろうし、その噂の人は別れた彼女を見て逃げるように去ったのだから。


「少し、いいかしら。」

女子寮へ向かおうと足を進めた瞬間、“彼女”に呼び止められた。怒っているとも取れないような声色で。


「なんですか。」

「あなた、ドラコをあまり困らせないでくれるかしら?」


トクン、と胸がなる。何を言ってるんですか、と口を動かそうとした瞬間杖を向けられた。


「なんの、真似ですか。」

「あなたが気に入らないのよ。私は欲しかったものは何でも手に入れてきたのに、ドラコだけは無理だった。形だけ私のものになっても、心だけはどこかに向いていたわ。本当に愛してなんてくれなかった…だから、」


震えた声の先には目を赤くした彼女がいた。私にはわけが分からなかった。何故彼女は泣くのか、何故杖を私に向けているのか。


スッと杖が下ろされる。取り巻きの女の子たちは私を睨んでいたが、中心の彼女だけは

「私でも落とせなかったのよ。あなた、もう少し可愛らしくならないと落とせっこないわ。」

と、笑った。素敵な笑みだった。もしかしたら彼女から別れを告げたのかもしれないと私はそのとき思った。絞り出したような声で笑う彼女の目から涙が零れたから。


「先輩、私…」

「なにも言わなくていいわ。もう、なにも。」


私が話そうとするのを制して、彼女はまた笑った。今度は少し困っているような笑い方だったので私は話すのをやめた。一礼してゆっくり女子寮へ足をすすめる。早く部屋に着きたいのに、足はなかなか早く動いてくれなかった。


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20110905
ドラコの彼女さんはきっとすごく複雑な心境



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