疲れた、だなんて呟いてベッドに倒れ込む。今日も本当に疲れた。リリーが心配そうに大丈夫?と聞いてくれたけど返事する余裕なんてないくらいくたくただった。


「どうしたのよ、らしくないわね。」

「リリーはさ、ジェームズが他の女の子とキスしてたら泣く?」


それとも、怒る?なんて聞けばリリーの目つきが怖くなった。またシリウスね、なんて低い声で言うもんだから「たとえだよ、たとえ!」と必死に言い訳をし、布団に潜り込んだ。本当はたとえなんかじゃなくて事実。それも風の噂などでなく、見てしまったのだ。自分の目で。

リリーもそれ以上干渉せず、綺麗な色のペディキュアを塗り続けていた。沈黙がなにより暖かく私を包み込み私は深い眠りについた。



翌朝。朝ご飯を食べに行こうと誘うリリーに食欲がないと嘘を付き、私は寮に残った。談話室で一人本を読んでいると不意に扉があき入ってきたのはリーマス。彼は私を見つけるなり隣に駆け寄った。


「朝ご飯食べないの?」

「食欲がないの。」


また本に目を落とせば、リーマスは何故か私に微笑みかける。


「シリウスのことでしょ?」


声が談話室に響く。リーマスから出た言葉は二人しかいないせいか余計寂しく感じる。


「まあね。」

「それ、きっと誤解だから早く仲直りしなよ?」


ま、もうすぐ彼の方から来ると思うけど…なんてリーマスが言った瞬間、談話室の扉が開いてシリウスが勢いよく入ってきた。そして何の迷いもなく私を抱き締める。


「リーマス、二人っきりで何してたんだ。」

「別になにもしてないよ。じゃあ僕は朝ご飯でも食べてこようかな。」


リーマスが談話室を出て行く。私に向けてウインクしたのが見えたが、あまりにビックリして返すのを忘れた。


「何、してたんだ。」


シリウスが耳元で囁く。何してたんだだなんて、それはこっちの台詞だ。


「何で来たの。」

「リーマスが大広間に来なかったから、ジェームズに聞いたんだ。」


そしたら、リーマスが談話室で彼女のこと食べちゃうぞ、なんて言われたから…最後の方は小さな声だった。ジェームズも人が悪いが、他の女とキスしておいてよくのうのうと彼女の前に出てこれるな、と心の中で悪態をついた。


「リーマスは相談に乗ってくれただけよ。誰かさんみたいに女の子ってだけで誰彼見境なくキスなんかしないわ。」


シリウスの顔が滲み、私は涙が出ているのだと知った。シリウスはそんな私の背中をさすりながら少し考えていたようだが一言、「あれはリーマスだ」と言った。


「何を言ってるの?列記とした女の子だったじゃない。」

「じゃあお前はその“女の子”の顔を見たのか?後ろ姿じゃなかったか?」


そういえば、あれは髪が長かったから女の子だと思っただけで実際に顔は見ていない。「リーマスに髪を伸ばす呪文をかけて、ただキスしてるように見せかけただけだ」とネタばらしをされて私は顔に熱が集まるのを感じる。


「お前が、最近他の男と仲良いから少しくらい俺の気持ちを味わわせただけだ。」


結果、大成功だったみたいだななんてニヤリと笑う彼に抱かれながら、本当に悪戯好きには勘弁して欲しいと思った。



smooch
私だけにキスしてよ



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20110816
黒ゆびさんへ!

smooch=キス



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