一つ年上のルシウス先輩は私の彼氏でありナルシッサ先輩の婚約者でもある。いくら純血と言えどもやはり家柄の壁は越えられるはずもなく、もうお付き合いして3年になるというのについ先日ルシウス先輩とナルシッサ先輩は婚約してしまった。それなのにルシウス先輩は相変わらず私に優しいし、ナルシッサ先輩ともベタベタしている。我が儘だとはわかっているもののやはり少し辛い。私たちが交際していることは公にされていないから、余計。


ほら、今だって。ここは大広間でみんないるっていうのに2人はあーん、なんてしちゃってさ。ルシウス先輩はきっと私が見てることも知っている。ヤキモチを妬くことも、どうしようもなく悲しくなることも。


「何余計に不細工な顔してるんですか。」

「あ、レギュ。」


声のする方を向けば隣にいた友達…ではなくレギュラスが座っていた。ルシウス先輩と私の関係を唯一知る人。


「あんたには関係ないの。」

「そうですか?」


突然、ぐっとローブの襟を引っ張られ2人の顔が近づく。半円を描いたような綺麗な唇が私の前でにやりと笑っていて、不覚にもドキドキしてしまった。


「おや、何をしてるのかな?」

ルシウス先輩の声が耳の端で聞こえた。しかし私はまるで妙薬でも盛られているかのようにレギュラスの唇に自ら近づき、キス―――をしようとしたのだ。が、それは割り込んできたこの不機嫌な男によって遮られた。

その男は私の手首を痛いほど掴んで、大広間から私を連れ出す。途中、レギュラスの「世話のやける2人だ…」という声と、ナルシッサ先輩の呆然とした顔が見えたがもうどうしようもない。この、腕を突然掴んできた男―――ルシウス先輩はとても怒っているのだから。


バンっ、と勢い良く扉が開かれ着いたのはスリザリンの談話室。そこを通り過ぎ、向かったのはルシウス先輩の私室だった。男子寮に何度か入ったことはあるものの、私は周りをキョロキョロ見渡し誰にも会わないかと心配しながら部屋に入った。


部屋に入った途端にベッドに投げられる。その上からルシウス先輩が覆い被さった。


「何故だ。」


いつも聞く優しい声ではなく、低く怖い声。私は自分の声を出すことも忘れた。


「何故レギュラスなんかとキスしようとした。」

「私を好きと言ったのは嘘か。」

「first nameは私の彼女ではないのか。」


私が声を発さないのをいいことに次々に浴びせられるルシウス先輩の言葉。これじゃあまるで、私が浮気をしているみたいだ。


「何よ、私が別に男の一人や二人とキスしようが関係ないじゃない。どうせあなたにとって私は邪魔な女でしょう?三年も付き合っておいて婚約者が出来たなんて笑わせないで!本当に…本当に好きな私の気持ち考えたことないでしょう!?ナルシッサ先輩とルシウス先輩はお似合いだね、なんて言われて頷くしか出来ない私の気持ちなんて―――」


ちゅ、と音をたてて唇から離れたのは先輩の唇だった。ルシウス先輩はそりゃあもう見たことないくらい情けない顔で「私は本気なんだ」と独り言のように呟いた。


「本気なんだよ。だから他の人なんかに近付かないでくれ。」


それはこっちの台詞よ、と思いながらつい許してしまうのはもう何度も経験済みだ。


私だけを見て
それでも、もう少し私だけを見てくれないかしら


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20110810



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