1年に1度、ハロウィンで賑わう今日のホグワーツは魅力的なのにも関わらず、私は図書室で一人本を読んでいた。別に友達がいないわけでも、ハロウィンが嫌いなわけでもない。むしろ、お菓子を貰えるなんてすっごくすっごく幸せな一日のはずなのに、私は今それを我慢して大人しくしている。そろそろ、来るはず…
「first name先輩、こんなところにいたんですか。」
冷たい表情の彼は私の顔を見るなりうんざりしたように口を開いた。なによ、その言い方は。
「レギュを待ってたのに。遅い。」
「子供じゃないんですから、毎日毎日待ち伏せなんかしなくてもいいじゃないですか…。」
「待ち伏せってねえ…」
レギュラスは絵になる仕草で本を開くと、こちらを見向きもせずにそれを読み始めた。
「ちょっと…待ってたんだからお菓子頂戴よー」
「まだ寝ぼけたことを言ってるんですか?」
あんたになんかありませんよ、と可愛いげのない口調で言うもんだから、少し、悪戯してやろうと迷いもなく顔を近付け唇を奪ってやった。 どうだ!って顔をしていると、彼はため息を付いてこちらを睨む。
「あ…あれ?怒った?」
「誰彼ともなくキスするんですか、先輩は。」
大事な人とするもんですよ、なんて怒って、少し説教を垂れた後、逃げるように図書室を出ていってしまった。
「ほんとに好きなのになあ…」
唇を軽く触って感触を思い出す。ファーストキスがレモン味だなんて嘘っぱちだった。
trick 可愛い悪戯でしょう?
------------------------------ 両想いだと分かってるからキスしちゃった先輩と、自分の気持ちはバレてないと思ってるレギュラス君。
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