あ。

一瞬目が合ったかと思うと、彼はニコリともせず踵を返し私の前から消えた。ホグワーツの中は広くて、おまけに生徒がごった返すお昼時。廊下で見た彼など追いかける間もなくいなくなってしまった。


スリザリンの中でも珍しく劣等生な私は、密かにドラコくんに恋心とやらを抱いていたりする。最初は意地悪なやつ、と思って毛嫌いしていたのに、女の子は単純で、落ちこぼれな私にも優しくしてくれる彼をコロッと好きになってしまった。それもかれこれ4年目になる。特になんの進歩もなく、スリザリンってだけで傍に、それも隅っこのほうに居れる幸せを毎日噛み締めているところだ。

が、こうもあからさまに避けられると流石に滅入る。こうしたことが始まったのはごく最近で、なにか悪いことでもしたかと頭を抱える日々だ。相談する相手もとくにいないので、私はいつも一人で考えている。それは寝る前のちょっとしたひとときでもあるし、授業中でもあるし。今回はお昼ご飯を食べてる最中に、ぼーっと考えていた。


考えることに集中し過ぎたのか、余計に疲れた気がして私はそこで匙を投げた。なるようになるさ。そうポジティブに考えながら、フレンチトーストにはちみつをたっぷりとかける。そうして、とろっとした綺麗な色のはちみつを見て、またぼーっと考え始める。


「おい、first name。聞いているのか?」

ん?と思って横を向けば、スリザリン生のネクタイ。珍しい。スリザリン生は劣等生の私になんか絶対に話しかけないのに。

「なにぼーっとしてる!さっさと来い!」

ぐいっと腕を引っ張られて立たされ、そのスリザリン生は無理矢理食事中の私を連れ去る。その後ろ姿はプラチナブロンドの彼にそっくりで―――――

「ど、どらっ……!ドラコくん?!」

なんで、どうして。思考が追い付かないままぐんぐん加速する歩調。気付けば寮の談話室だ。息も絶え絶えな私に対し、ドラコくんは息こそ落ち着いているものの顔は真っ赤だ。

「悪い…気が、落ち着かなくて。」

「へ…?」

普抜けた声を出すと、真っ赤な彼は私の両肩を掴んで、「お前のことじっと見てた奴がいたから…」と消えるような声で呟いた。

私は私で、それってもしかして…!なんて自意識過剰に妄想が止まらなかったり。おかげで二人して茹で蛸状態で、恥ずかしいくらい甘い空気が間を流れたお昼休みになった。


はちみつ
いい加減気付いて



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両片想いです。
ドラコは告白してるつもりなんだけど、なかなか上手く伝わらずもだもだな感じ。



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