「本当に面白いね。」

彼は心底うんざりした顔をして私に言った。対して私は、さっきハッフルパフの男子から言われたことで頭がいっぱいだった。

「"first nameさんって女の子だったんですね・・・!"なんて、僕が良く言ってるじゃない。」

「それとこれとは違う。」

あまり関わったことがなかった男子から、「女の子だったんですね!」なんて嬉々とした表情で言われて嬉しい女なんていないだろう。だいたい、私はスカートを履いているし、いくら胸がないからってそんな・・・。

「はあ・・・。」

ため息混じりに友達が作ったマカロンを頬張れば、あまりの美味しさにまたため息が出た。女の子らしいお菓子なんて作れないし、魔法だってあんまり上手くないし、胸もないし。それに、リドルだってもっと上手いフォローの仕方ってもんがあるじゃない。仮にも彼氏なんだし、少しくらい褒めてくれてもいいのに。

「不細工がため息吐くと更に酷くなるね。」

にやにやしながらこちらを見てる彼をみて、私は何かが切れた。勢いよく立ち上がると、無言で談話室を出る。

「どこに行くんだ。」

少し焦った声の彼に、私はざまあみろ、と心の中で笑う。でもまだまだこんなもんじゃ許してあげないんだから。


しかし、予想とは裏腹に廊下を歩けば責められるのは私だった。「リドル君が可哀想」とか「我侭な彼女さん」とか。リドルもリドルで「いや、僕が悪いんです」なんて営業スマイルで言うもんだからみんなリドルの味方して。それでも私は歩くのをやめないで、女子トイレに駆け込むと少し涙が出てきてしまった。女子トイレまではリドルもこれないし、一人で気兼ねなく泣ける。どうせ可愛くないし、リドルと釣り合わないし、いっそ別れた方がいいのかもしれない。そんなことを考えていたら涙が止まらなくなって、私はリドルが大好きなのだと思い知らされる。気付けば夕飯時で辺りはもう暗くなっていた。



目を水で冷やし、腫れているのが分からないようにして私はトイレを出た。あれから軽く二時間は経っているというのに、トイレから出て一番に目に入ったのはリドルで。

「なんでいるのよ。」

ぶっきらぼうに睨みつけながら聞けば、彼は私の腕をぐいっと掴んで来た道を戻る。廊下の生徒たちは何事かとこちらを見ているし、目だってまだ完全に冷えていないから泣いていたのだってバレバレで。しかもリドルはなんだか知らないがとても怒っている。掴まれた腕は今にも鬱血しそうだし、なにより痛い。リドルは無言のまま自室に向かって階段を上がると、乱暴にドアを開け部屋に鍵をかけた。

「どうしたのリドル。」

「どうしたのは僕の台詞だ。」

乱暴にベッドに押し倒された私に覆いかぶさるように乱暴にキスをする彼。息が苦しくなり胸を叩く。

「ちょ・・・やめて・・・!」

「僕がどんな気持ちで君の泣いてる声を聞いていたか分からないの?」


好きな子が泣いてるのになにもしてあげられないのはうんざりだ。


彼はそういうと私の上体を起こし、乱れた服を整えた。

「ごめん。」

謝るリドルはうな垂れていて、なぜかこっちが申し訳なくなった。

「ねえ、なんでリドルは私と付き合ってるの?」

「好きだから。」

は?、と聞き返すまもなくまた唇が降ってきて言いたい言葉が喉の奥に引っ込む。なによ、それ。


唇を合わせながら、このドキドキがおさまったら私の好きなとこをリドルから詳しく聞こう。そして、ちゃんと仲直りしようと思う私はやっぱりリドルに甘いのかもしれない。

不器用恋愛



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