Whereabouts







いつも無駄に元気が良くて明るくて、我儘な所もあるけどなんだかんだ人一倍周りを良く見ていて面倒見の良い丸井先輩。
常に冷静沈着で落ち着いていて、たまに何考えてるいるのかわからないけどこの人も周りのことを良く見ててとっさのことにもすぐに判断できる仁王先輩。

一見全くタイプの違うこの2人。本来ならこうゆう2人が絡むとなると何かとぶつかりあうんじゃと考えるるが、この2人は違う。タイプが違う分お互いに足りないものをそれぞれ補うかのように。タイプが違うからこそこの2人は上手くやってるんじゃないかと、俺は思う。



「…で?今回はどーしたんスか、丸井先輩」

「……」

「黙ってちゃわかりませんよー」



このやり取りも何回目になるだろう。何度質問をかけても黙りこくってる丸井先輩をちらっと見てからハァと小さく息をつく。今は放課後、テニス部部室に俺と丸井先輩の2人きり。今日は久しぶりの部活のオフ日、さっさと家に帰って今まで溜め込んだゲームをやろうと楽しみにしながら廊下を歩いていたら丸井先輩に捕まった。



(赤也ーー!!)

(うわっ丸井先輩!?って、なんでそんな会った早々機嫌悪いんスか!?)

(ちょっと、付き合え!)

(え、ちょ、無理っス!ゲームが俺を待って…)

(知るか。ほら、はやく行くぞ)

(ちょ、俺の休みーー!!!)




そんなこんなで半ば強制的に部室まで連れて来られた訳だけど…先輩はさっきからこんな状態だし。くっそ、せっかくの休みだってのになんで俺が…!



「まーるーいー先輩ー」

「…なあ、仁王ってさ…」

「(お、やっとしゃべった)…仁王先輩?」

「仁王ってさ、…かっこ良いじゃん?」

「…はい?」

「それに頭も良いし、落ち着いてて大人だし…」



やっと口を開いたと思えば何を言い出すんだこの人は…え、まさか俺を呼び止めてまで惚気?ただ惚気たかっただけ?



「…あの、話の内容が全然見えないんスけど」

「つまり!仁王って人間として完璧じゃん!」

「はぁ…(完璧…?)」

「そんなヤツがさ、こんなまだまだガキなんかを本気で好きになんのかな…」



だんだん小さくなってく先輩の声。あーなるほど…そーゆうことか。丸井先輩と仁王先輩、タイプの違う先輩達。見る人によってはこの2人が仲良いのが不思議に感じる人もいるんじゃないか。テニス部、同じクラスという接点があるからそう感じる人は少ないだろうけど…もしその2つの接点がなかったら俺も少し不思議に思うだろう。だけどこの2人の場合、互いに足りないものを補いあってる。ギャーギャーうるさい丸井先輩を冷静な仁王先輩が止めて、自分に無頓着な仁王先輩を面倒見の良い丸井先輩が世話を焼いている。タイプが違うからこそこの2人は上手くやってるんじゃないかと俺は思う、んだけど…タイプが違う分、やっぱり不安になってしまうこともあるんだろうか。



「俺…ちゃんと仁王に好かれてんのかなー…」



ポツリと小さく呟きながら丸井先輩はその場にしゃがみこんだ。俯いてたから表情は確認出来なかったけど、丸井先輩の声が悲しそうだった。いつも自信満々で、自分で自分のことを天才的って言っちゃってる人が、何こんなことで悩んでんだよ。アンタら2人どっからどうみても相思相愛じゃん。…って本人達にしてみたらきっと深刻なんだろうな。タイプが違う2人…丸井先輩が心配になるのも無理ないか。



「らしくないっスよー丸井先輩」

「…るせえ、俺だってわかってらい」

「いーやアンタは何も分かっちゃねぇよ。分かってたら…こんなことで悩んでたりしないっしょ?」



俯いてる丸井先輩の顔を覗き込むように俺も先輩の前にしゃがみこむ。未だに先輩の瞳は不安で揺れていた。…ほんと、らしくねえよ、先輩。



「仁王先輩はたしかに落ち着いてるし、考え方も大人かもしんねぇけど、」

「…」

「だけど、アンタも仁王先輩の気持ちがわかんねぇほどガキじゃねぇだろ?」



仁王先輩はアンタのことちゃんと好きッスよ、俺が保障しますって!ニッと挑戦的に笑って丸井先輩に言った。ったく、生意気なんだよお前はよ!、そう言って俺の頭をグリグリしてくる丸井先輩は、もう先ほどの不安な様子もなくいつものように自信に満ちている丸井先輩だった。



「(ガチャ)…あ、丸井こんな所におったんか」

「、仁王…」



部室のドアが開いて、入ってきたのは仁王先輩だった。



「お前さんはトイレに何分掛かるんじゃ。遅いから心配したぜよ」

「仁王先輩、ちょうど良かった!」

「赤也、お前さんは丸井と2人で何してたんかのぉ?」

「やだなーそんな顔しないで下さいよ。それに俺は被害者なはずなんだけど…」

「ほぉか…ほら丸井、鞄持ってきたけぇ帰るぜよ」

「ちょ、仁王…!」



しゃがみ込んでいた丸井先輩の腕を掴んでグイグイ部室の外へと進んでいく仁王先輩。その後ろを必死に着いていく丸井先輩。たっく…あの人のどこが大人なんスか丸井先輩。たしかに考え方が大人でも…こんなことでヤキモチを焼くなんてまだまだ子どもじゃないッスか。ま、俺も今の仁王先輩の行動には少し驚いたけど…つーか丸井先輩気づいてんのかな。あの仁王先輩がヤキモチ焼くなんて、アンタ相当好かれてんじゃん。なんか悔しいからしばらくはこのことは言わないでおくけど。



「…入り込む隙間ねぇよなー」



隙あればなんて考えてみたけど…そんな考えはもうやめだ。あんなにお互いを想い合ってる2人探してもそんないねぇよ。入り込む隙間がないのなら、俺は大切な人がいつまでも笑っていられるよう手助けをしよう。良い後輩だと、少しでも強くあの人の心に俺の存在を残してもらえるように―



Whereabouts




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「grass with winter」の吉野里麻ちゃんに相互記念として捧げます。里麻ちゃん、ほんっとーにお待たせ致しました!

初のCP小説、書いててめちゃくちゃ楽しかったです(笑)分かりづらいですが一応「ニオブン←赤也」設定だったりします。ぷ、プリガムレッドが大好きなんです!!(…)里麻ちゃん、相互リンク&リクエストありがとうございました^^これからも仲良くしてください♪

恋時雨*那華