「───はぁ!?」


男の言葉を受けて、名前は数分前の幻想的な邂逅をぶち壊すような間の抜けた声を上げてしまった。


「ちょっと待ってどういうこと!?貴方が英霊じゃない───非正規のサーヴァントって!」

「僕だって詳しくは知らないし、何よりサーヴァントとして召喚された僕が一番驚いてるんだ。僕が英雄な筈がない。衛宮切嗣なんて英雄を君は知っているかい?」

「知らないわよそんな英雄……!ねぇ、本当に貴方サーヴァントなの?」

「ああ、この事実は信じがたいことだが何故か自分がサーヴァントだという自覚はある。サーヴァント・衛宮切嗣、クラスはアーチャー、マスターは名字名前」

「私の名前…」


初対面の男に名を呼ばれて名前ははっとした。まだ自分は名乗っていないのにこの男はそれを口にした。あたかも事前にそれを知っていたかのように。


「サーヴァントは聖杯から必要な情報や知識を与えられる。それぐらい魔術師なら知っているだろう?それに、魔術師なら感じている筈だ、僕と君にはパスが繋がっていると」


名前はとっさに右手の甲に左手を重ねた。そこには鮮やかな紋様が浮かび上がっている。サーヴァントを束縛し、マスターの膝下に置く為の刻印───令呪。
これが現れたときから自分と目の前のサーヴァントが繋がっていることを名前は感じとっていた。サーヴァントはパスを通じて与えられるマスターの魔力によって現界し続けることができる。しかし、サーヴァントが倒れ、戦えなくなればマスターを待つのは死だ。地上で行われていた聖杯戦争と異なり、この聖杯戦争に於いて、マスターとサーヴァントは運命共同体なのだ。
名前とてそれは重々承知だ。しかし、衛宮切嗣には悪いが自分の命を預ける存在がイレギュラーな存在なのは名前にとって不安この上ない事態である。
取り敢えずこの現状を打破しなければなるまい。


「……何かのバグかもしれないし、システム管理側に話をしに行こうと思うんだけど」

「それが賢明だろうね」


他人事のように軽く言われて名前は思わず頭を抱えたくなった。
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