今夜の僕はどうかしてる。
寂しいか寂しくないかと聞かれたら、間違いなく寂しいのだろう。
― 先輩を、感じたい。
こんな風に思う夜は随分と久しぶりだ。
声だけじゃ足りない。
その細い肩を掴んで、抱き締めて、僕のものだというシルシを付けて…
先輩のナカに僕を埋めたい。
先輩を僕でいっぱいにしたい。
…でも本当は逆なんだろう。
僕の中を、先輩で満たしたいんだ。
どうしようもなくて、僕は自室のベッドに身を沈めた。
枕元には携帯。
充電が30%を切っていた。
まるで僕の心と連動しているようで思わず苦笑。
幾度となくこの携帯で先輩の声を聴いてきた。
しかし今日ほど聞きたくて聞きたくてしょうがない夜は珍しい。
僕自身に一番驚いている。
手探りで携帯を取り、無意識に先輩の番号を探す。
先輩は7回目のコールで漸く出た。
『もしもし。あ、梓君?』
「先輩…」
自分でもびっくりするくらい弱々しい声。
たまには僕も感傷に浸る時だってあるんですよ。
「先輩が、欲しいです」
『え?え?梓君…??』
「今すぐ欲しいです」
『ど、どうしたの??』
先輩が物凄く驚いているのがわかる。
電話越しで真っ赤になっていそう。
本当に、可愛いな。
僕だけの先輩。
その声も、コロコロ変わる表情、大きな瞳、白い肌。
全部、全部、僕のもの。
今、僕の瞳に映したいもの。
それが先輩のすべて。
もう、我慢できそうにない。
「先輩、充電が切れそうなんです」
『携帯の…?それなら充電したまま話せば…』
「そっちの充電も切れそうですけどね」
『え?』
「僕の中の先輩が足りないいんです」
『あ、梓君!?』
「今から会いに行きます」
『えっ!!!!ちょっ、あず…、』
「先輩で、僕を満たしてください」
返答を聞く前に僕は携帯を切った。
充電は赤ランプの8%、僕自身も間もなく切れそうだ。
ねぇ先輩。
僕ってわがままなんでしょうか?
先輩の困った顔も愛おしい。
僕の言葉ひとつで真っ赤になる先輩はもっと愛おしい。
どうしようもないくらい先輩への愛しさで溢れていく。
これからの出来事を想像して頬が緩む。
僕は部屋を駆け出して先輩の元へと向かった。
I need you tonight
I need you right now
I know deep within my heart
It doesn't matter if it's wrong or right
I really need you tonight...
‥fin‥