愛しい時間
「○○ 寝た?」
私が寝室から出てくると、錫也はにこっと微笑んで声をかけてきた。
「うん。寝る前に読んだ本が面白かったのかな?なかなか寝付かなかったけど、今漸く寝たところ」
「そっか」
錫也はクスッと笑う。 私は何で錫也が笑ったのかわからなくて首を傾げてみる。
「何で笑うの?」
「いや… だって今日読んだ本って確か星座のお話だろ?○○も俺たちに似て星が好きなんだなって思って」
「ふふ、ホントだね」
私は錫也の座っているソファーの隣に腰かけて、頭をちょこんと錫也の肩に預けた。 すると錫也も私の肩を抱き、二人は密着した状態になった。
「錫也?」
「なに?」
「○○はどっちかっていうと私と錫也のどっちに似てると思う?」
「うーん…甘えんぼで泣き虫で負けず嫌いなところは名前によく似てる」
「でも容姿は錫也の小さい頃にそっくり!」
「俺たち二人の遺伝子しっかり受け継いでるよな」
「ホントだね」
私も大きく頷く。
錫也と結婚して、子どもができて。 それだけですごく幸せなのに、その子どもが自分たちのいいところも、悪いところも、全部引っくるめて似てくれてることがものすごく嬉しい。
「でもあいつは俺の性格にもよく似てると思う」
「○○優しいし、お手伝いもよくしてくれるよね。しっかり者のところとか錫也そっくりだよ」
「んー… それだけじゃないよ」
「え?」
錫也は私の瞳を覗き込み、そしてそのまま瞼にキスを落とす。 ちゅっ、と立てるリップ音が厭らしい。 でも錫也の唇の温もりは大好きだからもっと欲しくなってしまう。 欲張りだって思われちゃうかな…?
そんなことを思っていたら、錫也はクスッと笑い、口を開いた。
「あいつ、お前のことが大好きだから。小さいながらにお前をパパである俺に取られたくないって思ってる」
「ふふっ それ本当?」
「○○は男の子だからな。前に『大きくなったらママと結婚するんだ!』って言い張ってたぞ?俺もうかうかしてられないな…」
「錫也ったら」
私がクスクス笑うと錫也はムッと口を結んで剥れる。
「こーら。名前、笑わない」
「だって相手は子どもだよ?」
「たとえ自分の息子でも、俺はお前を取られたくないの」
「錫也の独占病ー」
「あ、そういうこと言うお前にはお仕置きが必要だな」
そう言って錫也は座っていたソファーに私を優しく押し倒す。 押し倒す、というより寝かせるの表現の方が正しいかもしれない。
「錫也…」
「なぁ お願いがあるんだ」
「なぁに?」
私が聞き返すと錫也は私の唇にキスする。 そして真剣な目で私を見つめた後、口を開き、言葉を紡いだ。
「もう一人、子ども作らないか?」
その言葉を聞き、私は顔が真っ赤になる。 でも嬉しい。 私もそう思ってたところだったから。
「ふふっ いいよ。私も欲しいなって思ってた」
今度は女の子がいいの? 私が錫也に尋ねると、錫也は笑って言った。
「女の子でも男の子でも、どっちでもいい。俺とお前の子どもなら絶対可愛いから」
「錫也…」
私も頷く。
「じゃあ今夜は久しぶりに名前を独占しようかな。寝かさないよ?覚悟して?」
「はーい」
唇に落とされたキスが合図。 私は錫也の温もりを全身で感じながら、目を閉じた―…。
‥fin‥
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