ifの話





もしも、もしもだよ?
明日わたしが消えちゃったら錫也はどうする?

よくあるifの話。だけど名前は泣きそうな顔をして訊いてきたから俺は「どうした?」って尋ねる前に名前の身体をぎゅうっと抱きしめて安心させた。
名前は時々突拍子もない質問を投げかけてくる。それが非現実なものだとしても、俺はちゃんと答えたい。

名前が消えちゃったら?
そうだな、俺も消えちゃおうかな。

錫也も消えちゃうの?

うん。
だって、名前のいない世界なんて俺にとったら無いのと同じだから。



名前がいて、俺は初めて俺になる。
その名前がいなかったら、俺は存在理由がなくなってしまう。
だから消えてしまおうかな。

狂ってる

他人はそういうかもしれない。
でもこれが俺と名前の構築される世界。
世界は狭くていい。
広い世界など見なくていい。
俺は名前が居る世界だけでいい。

そう思ったら隣に居て息をしている名前がとてつもなく愛おしくなって、俺は胸がきゅっと締め付けられた。








..fin..


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