もう君以外愛せない
















錫也と一緒にいる、何気ない瞬間が好き。



たとえば、朝起きて隣に錫也の温もりを感じる時。

たとえば、リビングでテレビを見ながら私の髪を撫でる時。

たとえば、夜寝る前に星座の神話を話してくれる時。



起きてから眠りに就くまで、私の瞳に錫也が映る限り、私は幸せを実感する。
何かしてる時でも、何もしてない時でも。
隣に錫也がいる。ただそれだけで、泣けちゃうくらい幸せ。
こんなこと言ったら、きっと錫也は泣いてる私を見て「泣き虫だな」って笑うんだ。

…そうだよ。錫也のことになると私は途端に涙脆くなるんだ。
でも、これは悲しくて泣くんじゃない。
嬉しくて、錫也の隣にいることができて嬉しいって気持ちが溢れて、それが滴になるんだ。





今までいろんなときめきを覚えてきた。
錫也以外の人を好きになったこともあった。

でもね、過去のときめきを全部足しても足りないくらい、これから私はもっと錫也にときめくと思うの。
これは希望的観測ではなく、確信。

今もね、錫也を好きな気持ちが一分一秒ずつ増えていくの。
積もり積もった想いはいつか雪のように解けてなくなってしまうのかな?
そんな不安が時々過ぎる。
だけどね、解けてなくなってしまう想いでも、きっとまた雨のように降ってくるんだ。


人の気持ちなんて天気みたいにコロコロ変わる。
錫也への想いの雨も、いつかは止んでしまうかもしれない。
こればかりは、私自身もわからない。
人の望む永遠ほど儚いものはないから。


でも、この瞳に錫也が映り続ける限り、愛したいと思うの。
今までいろんな「好き」に出逢ってきた。
だけど錫也の「好き」はどんな「好き」よりも優しくて穏やかで、ぽかぽか暖かい。
この午後のひだまりのような想いをいつまでも忘れたくはない。



錫也といるとね、信じてみたくなるんだ。永遠を…。












「名前?考え事か?」





私を覗き込む錫也。
錫也の瞳に私が映ってるのが見える。
それがなんだか嬉しくて。
ふとね、やっぱり泣きそうになる。




「考え事だよ?」

「どんな事考えてた?」

「んー。忘れちゃった」

「ははっ、お前らしいな」




そう言って私の頭を撫でる。
優しく私を見下ろす錫也の視線が大好き。



― 俺の事考えててくれたら嬉しいな


耳元で甘く囁く錫也。
そうやって私の思考をいつもいっぱいにする。
ちょっとだけ、悔しかったから。
秘密にしておくね。






私は錫也の腰に腕を回し、抱きついた――。



















‥fin‥