midnightにキスをして。














夜って不思議。
真っ暗な闇に包まれていると、隣に愛しい人がいてもまるで一人きりのような感覚に陥る。
寂しいとか、切ないとか。
いろいろな感情がぐちゃぐちゃになって。
私はベッドの中、錫也の手を見つけてぎゅっと握った。



「名前?どうした?」

「錫也…」

「怖い夢でも見たのか?」

「ううん…」



違うの。
そう言う前に錫也が私を抱き締めてきた。
優しくてあったかい。
その体温に包まれてると安心して、不安な気持ちがすーっと消えていく。
錫也は不思議な人。
私のことを全部受け止めてくれる。
この言葉にできない想いも、みんな錫也が受け止めてくれるの。
だから私は私を保っていられる。



「錫也が隣にいると安心する」

「俺も。名前が隣にいるだけで幸せな気持ちになるよ」

「私たち、同じ気持ち?」

「ああ」



にこっと笑い、どちらともなく唇を重ね合わせる。
軽く、触れるだけのキス。

ねぇ 錫也知ってた?
私、錫也にキスされると今でも心臓が止まりそうになるんだよ。
ドキドキして胸が苦しくなる。
甘くて切なくて涙が出そうになる。



「錫也が好き…」

「クスッ 今日のお前は素直だな」



可愛い、と呟き微笑む錫也。
こんなに優しい笑顔をする人、私は錫也以外知らない。
心があったかくなって、不意にキュッと狭くなる。
錫也って本当に不思議な人…



「錫也が、好きなの…」

「知ってるよ。俺もお前が好きだ」



私を抱き締める腕の力が強くなる。

そうやって私を抱き締めていて。
離さないで、傍にいて。
不安にさせないで。
ずっと一緒だって囁いて…?


私は不器用だから自分の気持ち、上手く伝えられないけれど。
涙が出るくらい錫也のことが好きなのは本当だから…
錫也が私と同じ気持ちであると嬉しくなるんだ。



ねぇ だから。




「錫也」




愛しい人の名前を呼ぶ。



私に名前を呼ばれた彼は目を細めて、そっと唇を頬に寄せた。
幸せすぎて、視界が滲んだ。
そんな私のすべてを受け止めてくれる錫也。
どんな言葉でこの気持ちを表したらいいんだろう?
世界中の言葉をかき集めても足りなくて。
私はせめてもの想いで錫也の唇に自分のそれを重ねた――。




















‥fin‥